副業の所得区分が通達で整理されました!

通達つうたつ」や「パブリックコメント」が注目されるなんて珍しい話題です。


甘いキャラメルクリームパイ(ビッケ、石川県小松市)

副業の所得区分 炎上したパブリックコメント

「パブリックコメント」という意見を公募する仕組みがあります。

「e-Gov」では平日毎日のように新たな公募が始まっています。

広く意見を集める仕組みではあるものの、通常それほど注目されません。

とはいえ、例外はあります。

たとえば、下記の所得税通達の改正案。

7000通以上の意見が寄せられました。
 (マスコミによると、通常の100倍だそうです)

寄せられた意見の数も異例ですが、

  • その結果、当初案が修正された!

という点も珍しい例となりました。

所得税をめぐる面倒な内容が争点ですが、
所得税の仕組みを理解するきっかけにもなります。

副業の所得区分 副業の申告の抜け穴?

今回話題になった所得税の問題点は、

  • 副業での「事業所得」による税金逃れを防ぐ

という点にあります。

確定申告を適正にすれば、脱税にはなりません。

問題は「適正」のとらえ方です。

所得税では、「所得」を10種類に区分します。

通常、ビジネスでの所得では、

  • 本業→事業所得
  • 副業→雑所得

として確定申告します。

事業所得も雑所得も合算して税額を計算するので、
一見すると気に留めない区分かもしれません。

問題となったのは、「損益通算」です。

所得ごとの黒字と赤字を相殺する仕組みが、

  • 事業所得→アリ(相殺可能)
  • 雑所得→ナシ(相殺不可)

といった違いがあります。

所得税は「自己申告」制度です。

副業をしている方が、

  • 給与所得の黒字を
  • ビジネスでの赤字の所得を「事業所得」として申告

といったことが可能になります。

副業の所得が赤字ということに疑問がでそうですが、
家事関連費の経費計上による処理が当事者であれば可能です。

上記のような税逃れの申告がまかり通ると、

  • 副業での所得税だけでなく、
  • 本業(給与所得)での所得税までが

税負担から抜け落ちていくことになります。

課税当局が税逃れの抜け穴を防ごうとした措置が、
パブリックコメントにつながっています。

副業の所得区分 修正された通達

では、具体的にどのように通達が改正されるかというと、
以下の通りです。

丁寧な理解には見える化や図解が欲しいところです(笑)。

国税庁から以下の図解が示されています。

通達の解説を確認していきます。

まず、通達改正の趣旨とこれまでの考え方示されています。

ビジネスからの所得とはいっても、事業所得≠雑所得に違いがある
という点を示しています。

さらに、事業所得の判断基準として判例を参照しています。

言い換えると、上記の判例より自己申告での所得税制度であっても、

  • 納税者の判断次第で所得分類はできない

ということの伏線になります。

「(注)の後段」で事業所得と判断する基準として、

  • 帳簿の作成
  • 帳簿の保存

への言及があります。

帳簿を完備していれば事業所得、というわけでもありません。

事業かどうかを判断する基準として、

  • 収入金額
  • 営利性

といった個別の判断がなされます。

帳簿といった形式・外形からのみ事業と判断するわけではなく、
実態や実情をともなっていることで事業と判断するわけです。

ただし、これまでの税制改正を踏まえて、帳簿保存に不備があっても
事業所得とする可能性があることも言及されています。

お疲れさまでした(笑)。

副業の所得区分 大山鳴動したが…

パブリックコメントに寄せられた意見と国税庁の応答をみると、
今回の通達改正が理解しやすくなります。

  • 増税のための改正でもなければ、
  • 従来からの見解の変更でもない

ということが示されています。

今回の通達改正が注目された背景に、

  • 当初は収入を基準とした所得区分
  • 「本業(主たる所得)」と「副業」を区分

を想定していたことがあります。

パブリックコメントの修正案では、上記の点を修正したわけです。

記帳や帳簿書類の保存があらためてとりあげられたといえます。

通達の改正が注目され、パブリックコメントが盛り上がりました。

反面、今回の通達の改正では、

  • これまでの制度からの大きな変更はなく
  • 副業での所得区分の整理が行われた

という見通しが立ったといえます。

また、副業での所得区分といった問題を通じて、

  • 事業所得での申告の裏付けとして記帳や帳簿保存が強調された

ということができます。

記帳や帳簿保存は確定申告のためというよりは、
本来事業の運営に欠かせないはずです。

今回の通達の改正騒動は、副業での申告にとどまらない言及もあった
という点も見逃さない点に留意していただければ幸いです。

 

蛇足
「通達」は法律じゃないという正論があります。
だからといって見過ごせるか!?という見方が現実的、
ということも今回の件でよくわかります。

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