通達のルール通りに申告しても最高裁で否定される!?
本文を読んで、自分には関係無いと気楽にスルーしていただければ幸いです。
ルール通りで否定!? モーニングコール!?
春になると夜明けが早くなってきます。
起床時間は冬と変わらないと、起きる頃には薄明るくなるので
起床後の寝覚めも悪くありません。
冬は日照時間が短いので、起きてからも夜が続いている印象です。
ぼーっとして確定申告の相談に税理士として参加すると、
朝一番に目の覚めるような質問をいただきます。
所得税を中心とした確定申告での質問を想定しているときに、
- 家や土地の相続評価の方法ってどうやるの?
と尋ねられると、盛大なモーニングコールに聞こえます(笑)。
余談ですが、確定申告の相談会場の朝一番の応対は
やや厳しめの内容が多い印象です。
これから税理士に登録される方はご注意ください。
ルール通りで否定!? 通達の否定じゃない
相続税は相続によって移転する財産への課税となるので、
財産をどのように評価するかは大きなテーマです。
代表的な評価の対象としてあげると、
- 土地:路線価方式と倍率方式
- 家:固定資産税評価額と同じ
といった評価額が「通達」で決められています。
(相続税で通達が幅を利かせている理由とは?)
実際の適用が一筋縄でいくかどうかを別にして、
よりどころがあるのは助かります。
前述のモーニングコール(笑)のご質問に対しても、
とりあえずの回答となります。
とはいえ、通達が無条件に万能ではないので、
トラブルが起きます。
先日、財産評価で通達に基づいて申告した相続の件で
最高裁が納税者側を敗訴としました。
判決で示されたのは、一見すると通達の否定といえる内容でした。
通達を適用しての財産評価より不動産鑑定評価を根拠とした課税を示しています。
財産評価の判断根拠となる通達が棚上げされるとなると、
申告手続きが不安定になります。
ルール通りで否定!? 租税回避のリスク
私見ですが、上記の裁判の判決理由を読んでみると、
通達による財産評価を否定している内容ではありません。
むしろ一般的にルール(通達)を適用する状況や納税者との
違いに一線を引いた内容といえます。
以下は判決理由の一部です。
相続税には、
- 資産-負債=純財産が対象であり、
- 路線価を適用することで資産評価を圧縮できる
といった仕組みがあります。
上記の件では、納税者側が、
- 多額の借入をして(=負債UP)、
- マンションを購入して(=資産UP)
- 財産評価に通達を適用することで(=資産評価DOWN)、
結果的に相続税の負担を回避していました。
形式的には納税者側のルール適用が通りそうです。
しかし、判決をみると司法側は、
- もし・仮に○○していなかった場合、…
という展開での判断を示しました。
(○○は借入・資産の購入・通達の適用による評価の圧縮)
制度の想定外の適用で税負担を軽減することを「租税回避」といいます。
上記の件では、通達による財産評価の是非というよりも
相続以前から相続以後の不自然さに国税局が待ったをかけ、
司法が支持したといえます。
納税者側に有利な選択や判断の余地はありますが、
客観的な視点もリスク回避に欠かせないといえます。
蛇足
最高裁でとりざたされるような事件はどこかしら極端
という印象があります。
当事者になるのはスルーしたいところですが(笑)、
極端な事例は制度の理解や再検討のきっかけになります。
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