1年間のお金の入出金だけでは資料不足!?
青色申告の発生主義と現金主義
「話が噛み合わない」というよりも「期間がズレている」
ということばの補足が必要です。
期待する成果のズレも埋め合わせたい対象となります。
資料不足!? ホッと一息?、もう一息?
同じことばで話していても、書面を見ていても
異なる状況を想定することがあります。
たとえば、確定申告での資料。
通帳や領収書レシート請求書、さらに控除証明書…etc.
と必要な書類は多々あります。
所得税の確定申告は1月1日から12月31日での所得が対象です。
直感的には、上記内の日付の資料が必要である
と認識します。
言い換えると、1月1日から12月31日までの資料を集めれば、
確定申告の資料準備は完了という考え方です。
あながち間違いではないのですが、決算が必要な場合、
税理士とのやりとりでのズレの原因となります。
依頼者側が資料を税理士に渡して、ホッと一息かもしれませんが、
税理士はもう一息!という状況だったりします(笑)。
資料不足!? 発生主義と現金主義
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で決算書を作成しようとすると
下記のような選択画面がでてきます。
青色申告と白色申告(収支内訳書)の区別は比較的知られています。
わかりにくいのは、「青色申告決算書(現金主義用)」です。
ノーマルタイプの青色申告決算書との違いが気になります。
ノーマルタイプの青色申告では「発生主義」会計が前提です。
たとえば、12月末に売上があり、翌年1月に入金された場合、
- 12月末 (借方)売掛金/(貸方)売上
- 翌年1月 (借方)預金/(貸方)売掛金
という処理を行います。
お金の動きではなく、請求できる権利や事実に基づいた発想です。
参照する資料やデータの視点では、
- 翌年以降の日付の資料やデータも要確認!
という言い方もできます。
簿記がわかりにくい印象をもたれる原因は、
- 「借方」・「貸方」の仕訳
といった特異なフォームということもありますが、
- 発生主義による認識と計上
がお金の動きといった直感的な発想とズレることにもあります。
直感的な会計処理を優先して「青色申告決算書(現金主義用)」を選択
という選択肢もあります。
ただし、下記のような制約があります。
- 不動産所得と事業所得の合計所得が300万円以下
- 「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」を提出
- 青色申告特別控除が10万円
また、現金主義会計であっても減価償却の計算は必要です。
資料不足!? 成果のズレ?
「青色申告決算書(現金主義用)」は特徴のとらえ方次第で
評価や成果にズレが生じます。
小規模な事業者が青色申告の特典を利用しつつ自力で申告する
という場合には「青色申告決算書(現金主義用)」も選択肢です。
反面、「青色申告決算書(現金主義用)」では、
- 期間をまたぐ取引を帳簿上は認識できない
- 貸借対照表を含めた経営状況がわかりにくい
といった確定申告以外での会計の利用でひっかかります。
経理や帳簿作成の成果を確定申告に限定するのではなく、
- 経営状況全体の把握
- 経営の長期的な管理
といった視点に立つと発生主義がおすすめです。
複式簿記と電子申告で青色申告特別控除が65万円にもなります。
経理や帳簿作成の成果の整理も確定申告のテーマとなります。
蛇足
「キャッシュレス」決済と「現金主義」会計は関係ありません。
経理や帳簿作成での認識や計上の問題です。
嗚呼ややこしい(笑)。
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