税務会計の処理は理解を棚上げが効率的か?
減価償却、配偶者と控除と定額減税
「〇〇はとりあえず後回しにしましょう」と言われると、
ホッとしつつも、「?」もセットで残ります。
大人の学習は理解が優先とされていますが…!?
業務と効率性、理解の折り合いをどうつけるか?
理解は後回し 棚上げが効率的な仕事術か?
「結論を先に述べる」ことは効率的な伝達方法です。
前置きが長くなりすぎると、伝えるべき内容がピンボケします。
税務会計の処理は煩雑な処理や情報量もさることながら、
情報の送り手と受け手で理解や知識に差があります。
税理士がお客様に説明する場合、理解や意味を優先しすぎると、
聞き手のお客様がじれてしまいます。
売上や利益、税負担額といった処理の結果からお伝えする
といった展開だと無理がありません。
方便として理解や意味を後回し・棚上げします。
一方で、そうした段階のフォローが欠けていることは、
かえって残念な非効率になります。
理解は後回し 減価償却、配偶者と控除と定額減税
会計処理の定番に「減価償却」があります。
固定資産の取得の支出と帳簿上の経費計上のタイミングがずれる
といった直感的にはわかりにくい処理です。
- 取得 (借方)機械 (貸方)お金
- 決算 (借方)減価償却費 (貸方)機械
固定資産ごとに費用計上する期間となる耐用年数が異なり、
直感的にはわかりにくい処理です。
実務上は固定資産の取得価格と耐用年数、償却方法を確認して、
固定資産台帳に登録する処理が中心です。
処理は天下り的に済ますことができます。
一方で、減価償却の処理が導入された経緯は不明となり、
処理の理解や意味は置き去りとなります。
減価償却の意味や内容、経緯を簡潔にまとめると
- 「費用配分の原則」により適正な「期間損益計算」を行うため
- 19世紀欧米の鉄道事業経営の拡大とともに普及した
と手元で行う処理に比べて距離を感じます(笑)。
給与と配偶者でもわかりにくい仕組みがあります。
- 源泉控除対象配偶者
- 同一生計配偶者
- 扶養親族
「源泉控除対象配偶者」とは平成29年度税制改正で導入されました。
- 夫又は妻本人の合計所得が900万円以下で、
- 事業専従者ではない
- 合計所得が95万円以下の配偶者
「同一生計配偶者」は「源泉控除対象配偶者」とは異なります。
- 夫又は妻本人の所得とは関係なく、
- 合計所得が48万円以下の配偶者
両者のデータより所得税の「配偶者控除」・「配偶者特別控除」が決まります。
配偶者控除は導入以来、政治的・社会的な都合で見直しが続いています。
2024年(令和6年)6月からの「定額減税」は本人に加えて、
「同一生計配偶者」又は「扶養親族」が対象です。
同一生計配偶者は所得税の所得控除の仕組みと関連していますが、
夫又は妻の所得が1,000万円以下の場合です。
同一生計配偶者であっても配偶者控除の対象外の場合には、
「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」を提出します。
減税は魅力ですが、由来や経緯の異なる仕組みがともなうと
誤解や混乱が起きやすいので留意が必要です。
理解は後回し 理解は不要か?
税務会計の処理では量が多く、時間の制約があります。
大量の処理を的確に捌いていく必要があります。
理解を後回し・棚上げするだけの理由があります。
他方で、制度が導入された経緯や過程を知らないことで、
確認や対応がかえって非効率になることもあります。
なんとなく知っている処理や類似の仕組みがあるときは、
- とりあえず処理を優先しつつ
- 処理の目的や導入の経緯を理解しておく
といった対応がおすすめです。
制度や仕組みが変更されたときにも役立ちます。
蛇足
アイキャッチ画像は散歩中に見かけた作業現場です。
奥に見えるのは遺跡ではなく、庭園の水路のようです。
長年放置されていたらしく、土砂で埋もれていたようです。
数年間散歩していたコースでしたが、気づきませんでした(笑)。
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