遺産分割前に相続税の申告期限を迎えた!?
負担とリカバリー方法とは?

相続や相続税に慣れている方は想定しづらいはずです。

問題と対処法を知っておくことで不安を和らげられます。

紅白の温泉たまご(石川県加賀市山代温泉)

分割前に期限 締め切りと負担

「締め切り」を言い渡す側は当然・機械的対応と思っていても、
言い渡された側にとっては負担の発生となります。

「締め切り」→義務→債務、といった会計的な発想が
専門的な知識がなくとも実感できます。

たとえば、所得税の確定申告。

「3月15日」という有名な申告期限があります。

ただし、考え方やとらえ方次第では融通の利く余地があります。
 (確定申告のスジのいい時間稼ぎとは?)

事業活動以外でも申告期限が無視できない税目では
相続税の申告納税があります。

被相続人が亡くなった翌日から10か月以内が相続税申告の期限となります。

「10か月以内」という時間をパッと見ると、
大きな不安を感じさせない印象です。

所得税や法人税(決算から2か月以内)と比較しても
時間的な余裕がありそうです。

とはいえ、上記の余裕という印象には誤解がありそうです。

「10か月以内」に余裕を感じる背景には、

  • 相続税の申告=税理士の書類作成
  • 相続問題=相続税負担

といった誤解があります。

上記の「=」は「≠」ととらえることがおすすめです。

  • 相続税の申告≠税理士の書類作成
  • 相続問題≠相続税負担

分割前に期限 見逃しとリカバリー

相続税の申告プロセスを確認します。

flowchart TD; id1([1相続人の確認])-->id2([2遺言書の有無の確認]); id2([2遺言書の有無の確認])-->id3([3遺産と債務の確認]); id3([3遺産と債務の確認])-->id4([4遺産の評価]); id4([4遺産の評価])-->id5([5遺産の分割]); id5([5遺産の分割])-->id6([6申告と納税]);  

前述した誤解が生じる原因は、「5遺産の分割」にあります。

相続税の申告では、

  • 配偶者控除
  • 小規模宅地の特例

といった税負担を緩和する措置があります。

書類の作成も欠かせませんが、上記の場合に欠かせない書類が

  • 遺産分割協議書

となります。

相続財産の分割を相続人全員が同意したことを書面にします。

遺産分割には相続人の意思が反映されます。
 (相続人の意思を尊重するオモテとウラ 遺産分割協議書の作成)

見方を変えれば、相続人間での意思の折り合いがつかないことで
申告と納税に移れない可能性があります。

「締め切り」効果をテコに分割を進める選択肢もありますが、

  • まずは申告と納税を完了させることを優先して
  • 「更正の請求」で税負担をリカバリーする

という選択が制度上用意されています。
 (タックスアンサー「No4208遺産分割が行われていない場合の各種特例の適用手続」)

分割前に期限 情報と時間

「分割見込書」と「更正の請求」を利用することで、

  • 遺産分割前に申告期限を迎えた場合でも
  • 事後的に税負担をリカバリーできる

といった効果が期待できます。

とはいえ、相続財産の未分割状態が長期におよぶ可能性があります。

経済的にも心理的にも負担を抱えることになります。

遺産分割「協議」には、相続人が分割案を検討・調整するための

  • 情報・データ
  • 時間

双方が欠かせません。

まずは「10か月以内」での申告を進めることになります。

リカバリー措置の検討は後回しです。

 

蛇足
アイキャッチ画像は温泉たまごです。
石川県の一部地域では贈答用に温泉たまごが使われる
ということがあるそうです。
新年の賀詞交換の際にいただきました。
40年以上石川県在住ですが、知らないことはあるものです。

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