伝えるという在り方
ちょっとした違いかどうかで、指向性がわかります。
伝える 指導との違い
会計事務所勤務時代に、所長(経営者の税理士)がミーティングで関与先を適切に「指導」するよう訓示していたことがあります。
税理士会の研修でも、納税者への「指導」の必要性が説かれることはよくあることです。
話の文脈を踏まえれば、関与先であるお客様に不利にならないような処理に誘導することを求めているわけです。
サービス業として違和感の無い内容です。
とはいえ、「指導」には本来のサービスには無駄な要素が強く感じられることばです。
さすがに現代では、「教えてやる」や「教育する」ということばをサービス業で使う方はいないと思います。
また、士業であっても、測量士や電気工事士の方も「指導」ということばをサービスを提供する場面は想定しづらい印象です。
税務会計サービスは専門知識、言い換えれば学校教育では取り扱われない分野の知識が必要です。
専門知識は価値中立です。
エライセンセイでなければ「指導」できないものではありません。
知識や情報の中立性とサービスという行為に無用な上下関係を持ち込みたくないものです。
私は知識や情報は「伝える」で表現することにしています。
伝える 本能に引きずられないようにする
私は対話者間の関係をできるだけ水平、横、フラットにしておきたいと考えています。
年齢・経歴・性別などで対話者間の関係は流動的です。
その一方で、どうしても伝えておかなければ後々不利になることが歴然としてあります。
たとえば、白紙領収書をお友達からプレゼントされても使ってはいけないといったことなど(笑)。
性悪説を採用するか、性善説を採用するかはともかく、まず適切な在り方を「伝える」ことが先決です。
心理学上、ヒトは他者を批判することに喜びを感じるといわれています。
あらかじめサービスに不向きな本能が発動しないよう、「指導」ということばを使わない方が安全です。
伝える 徐々により、あらかじめ
基本的な考え方や方針は、判断や選択の基準となるので大切です。
見方を変えれば、基準は安易に変えるわけにいきません。
細かい情報や手法の変更は、徐々に・その都度でタイムリーに補ったほうが効率がいいものです。
しかし、判断の基準となる考え方や方針を伝えずに関与を始めると、後々トラブルのもとです。
面と向かって自分の考え方や方針を伝えるのは、少々気の想い展開です。
ホームページやブログなどの自分で発信できるメディアで、あらかじめ考え方や方針が伝わるようにしたいところです。
会計事務所などでは、先任者との引き継ぎの際に、これまでどのように仕事を進めていたのかインタビューをすることが有効です。
聞き取りだけで済まさず、備忘録も作成しておくとトラブルが減ります。
誤解や誤認のトラブルはゼロにはなりません。
ちょっとしたトラブルをこじらせないためにも、あらかじめ重要な方針や注意事項は確認したり、伝えておくわけです。
蛇足
「指導」や「鞭撻(べんたつ)」から距離をおく感性を鈍らせないようにしています。
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