所得税の確定申告は年末調整より厄介か?
デジタル化・オンライン化で前提が変わる!?
納税が義務で、所得税が申告納税制度ではあるものの、
大半の方にとって確定申告は例外の位置づけです。
勤務先での源泉徴収と年末調整で済んでいる状況だと、
確定申告の手続きが重く感じられるかもしれません。
本当にそうでしょうか?
前提は変わりつつあります。
どっちが厄介 申告税だけど例外の現状
租税教室で登壇した際には必ず「申告納税制度」に言及します。
国税、所得税・法人税・消費税・相続贈与税のどれもが
納税者が申告・納税する税目だからです。
一方で、給与所得と所得税の申告では歯切れの悪くなる一面があります。
一般に、給与所得者は、
- 給与から所得税分が「源泉徴収」で天引きされ、
- 「年末調整」により精算されるので、
- 確定申告を行うことがない
といった現状があります。
所得税は申告納税制度ですが、大半の給与所得者にとっては、
医療費控除や一部の手続き以外では申告とは距離があります。
一見すると、厄介な確定申告をスルーできている印象です。
どっちが厄介 確定申告は厄介か?
所得税の確定申告と一口に言っても10種類の所得区分があり、
それぞれに扱いが異なります。
厄介な申告の代表と思われる対象に「事業」所得があります。
個人事業主が売上や経費を集計して、帳簿・決算書を作り、
ようやく申告書の作成となります。
「3月15日」という申告期限を睨みながら処理に没頭する
といった印象かもしれません(笑)。
申告書の様式は概ね毎年同じであるとは言え、
- 収入、所得、控除、税額等の区別
- 控除の適用
- 書類の転記や計算
と完成までに煩雑な印象があります。
給与所得者にとって、源泉徴収・年末調整での処理は効率的
という印象かもしれません。
他方で、上記の印象には誤解もあります。
たとえば、経費の集計や所得への反映。
給与所得者にとっては収入全額が即所得の印象かもしれません。
給与所得では基本的に実費額での経費計上はしていませんが、
「給与所得控除」が組み込まれています。
申告書の作成といっても、「確定申告書等作成コーナー(国税庁)」と
行政のウェブサービスの利用で負担は大きくありません。
年末調整は所得税の処理を勤務先が代行してくれますが、
- 所得控除でプライベートなデータや事情を渡す必要がある
- 勤務先以外の収入をカバーしきれない
といった制度上の問題や限界も抱えています。
どっちが厄介 確定申告だけが対象か?
毎年、秋以降に職場から年末調整の資料の提出を求められる
といったことも風物詩かもしれません。
年末調整と言えども、所得税の計算構造は変わりません。
申告に必要なデータや資料は、年末調整も確定申告も共通しています。
ペーパーレス化やオンライン化の流れが強まってきており、
年末調整でもデジタル化・オンライン化に移りつつあります。
確定申告も電子申告が優勢な傾向です。
1箇所の勤務先の給与所得にしか対応できない年末調整であっても、
所得税申告全般に対応できる手続きと処理は重なります。
年末調整が確定申告に比べて効率面で優位という見方は
デジタル化・オンライン化で変化しつつあります。
デジタル化・オンライン化の強まりで確定申告の印象も変化しています。
蛇足
アイキャッチ画像は「團十郎芸術劇場うらら」で撮影したものです。
歌舞伎の芸名を冠した珍しい施設です。
JR小松駅の側にあります。
「うららかな」という形容と「私たち」に当たる方言「うらら」を
かけ合わせた名称です。
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