課税の繰り延べを利用するか、振り回されるか? 節税に飛びつかない!
ことばは上っ面より中身というテーマです。
7代目こだわりの栗きんとん(行松旭松堂(ゆきまつきょくしょうどう)・小松市)
課税繰り延べ 節税と繰り延べの違い
本来は専門的な文脈で使うことばでも、日常で使われていることばもあります。
たとえば、繰り延べ。
ざっくり表現すれば、先送りを意味します。
税金の繰り延べであれば、納税の義務が消滅するわけではなく、
納税のタイミングが将来に先送りされる、とうことになります。
課税の繰り延べと節税は、処理を行った時点では納税額が減る
という点で共通しています。
税金の負担額が少なくなった一時点だけをみると、
節税も繰り延べも同じです。
だからといって節税も繰り延べも同じという発想は
トラブルの先送りにつながります。
課税繰り延べ 繰り延べ後の違い
課税の繰り延べと一口にいっても違いがあります。
たとえば、住宅の買い替えの特例による繰り延べ。
マイホームを売却して譲渡益があった場合でも、要件を満たしていれば
所得税を繰り延べることができます。
買い換えた後の住宅を売却しない限り税金を繰り延べることができます。
同じく課税の繰り延べではあるものの上記とは区別したいのは、
節税目的の保険や倒産防止共済(経営セーフティ共済)です。
本来の保険や共済としての役割を期待するのではなく、
節税や繰り延べととらえていると留意する必要があります。
まず、保険や共済による税負担の軽減は節税ではありません。
一時的な課税の繰り延べです。
また、保険や共済を利用した課税の繰り延べは課税を繰り延べる事情で
前述した住宅の買い替えの特例とは異なります。
住宅の買い替えの特例による譲渡所得の課税の繰り延べには、
もし譲渡所得に課税をすると、住宅の買い替えが停滞する
という税負担によるマイナス効果が考えられます。
住宅の買い替えの特例による課税の繰り延べは税負担による
選択の歪みを出さないための仕組みといえます。
一方、保険や共済を利用した場合には
- 経費として認める → 税金を繰り延る
- 将来解約返戻金や解約手当金を受け取る → 課税の対象
となります。
さらに留意したいのはお金の事情、資金繰りです。
課税繰り延べ 繰り延べは長期だから厄介
課税の繰り延べを理解した上で選択することはできます。
とはいえ、その理解には支出するお金と資金繰りの想定が
欠かせません。
課税の繰り延べを意図して保険や共済を利用すると、
支出した分の資金は外部で拘束されます。
課税の繰り延べは長期の計画を想定していることが一般的です。
事業の動向や計画、資金繰りの検討が不十分だと、
近い将来でのトラブルがありえます。
慌てての決算対策でも注意が必要になります。
蛇足
ことばの誤解や混乱が起きる理由の一つには、
「節税」が法律(法令)用語ではないこともあります。
課税の繰り延べが誤解される原因でしょうね。
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