個人事業とプライベートはどうつながるか?
元入金と事業主勘定と利益の計算
単純な集計や入力に慣れてくると視野が広がります。
同時に疑問や不安の対象も増えてきます。
仕組みを理解するきっかけになります。
事業と生活 損益と申告書は1年間のみ
会計処理を会計ソフトで効率化しようとすると、
- 初期設定
- 複式簿記
- 消費税の処理
と次から次へと壁と直面します。
会計ソフトの集計・転記処理は魅力でも、上記の壁は厄介です。
とはいえ、なんとか壁を乗り切ると一段落となります。
適正な会計処理は必要ではあるものの、先が見通せます。
先が見通せるようになると、見えていなかった課題が見えてきます。
たとえば、個人事業とプライベートのお金の関係。
損益計算書は1年間の事業活動を対象としていますが、
事業は切れ目なく続いています。
会計上のつながりが気がかりとなります。
事業と生活 元入金と事業主勘定
個人事業では法人と異なり「資本金」はありません。
個人事業では「元入金」となります。
事業を始めたときの資金が起点という点では元入金は
純資産の部の資本金と似ています。
- (借方)預金 (貸方)元入金
違いが現れるのは決算処理以降です。
元入金は資本金とは異なり変動します。
- 翌期首元入金=前期末元入金+損益+(事業主借-事業主貸)
式をみると不安になるかもしれません(笑)。
青色申告決算書では貸借対照表の貸方に記載されます。
損益計算書ともつながっています。
ザックリ図解してみると以下の通りです。
ことばを補うと以下の通りです。
- 今年の事業の損益(黒字ならプラス、赤字ならマイナス)と
- プライベートの入出金の差額を
- 昨年末の元入金に加えると
- 翌年始めのの元入金の金額になる
あるいは、以下のとらえ方も同じです。
- 事業の損益+プライベートの入出金=翌期首元入金-前期末元入金
個人とは分離されている法人の会計処理との違いがあります。
元入金には事業や生活の変動が反映されます。
本来であれば注目されるべき対象にも思えます。
現実には注目度はイマイチかもしれません。
事業と生活 複式簿記と貸借対照表
元入金への注目度がそれほど高くないのは、
- 損益とプライベートより事後的に決まる
- 所得税の計算に直接関与しない
- 貸借対照表に表示される
といった面にあります。
元入金へのストレートな関心は持ちにくい印象です。
とはいえ、元入金がとらえられるようになる処理は、
- 事業の損益だけでなく、
- プライベートのお金の動きも反映させている
といった面での魅力があります。
「事業主」勘定は損益計算だけを対象とするなら集計の対象外です。
一方で、事業もプライベートも複式簿記で処理するのであれば、
事業主勘定は貸借対照表に反映されます。
結果として、事業の損益もプライベートの入出金も含めて
貸借対照表の元入金に集約されます。
単年度だけでなく、事業の損益だけではないデータとして
元入金をとらえることができます。
貸借対照表の隅っこ(貸方下側)ですが、元入金は無視できない対象です。
蛇足
個人事業での元入金や事業主勘定は税理士試験では登場しません。
合理的な処理であっても、初見だと「???」でした(笑)。
理解は必要ですが、慣れることも欠かせませんね。
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