繰延資産 独立開業なら知っておきたい

主演ではないが、見逃せない脇役。


一時ためておく。

繰延資産 資産っぽくないが

繰延資産(くりのべしさん)は名称から明らかなように、貸借対照表の資産に計上されるものの分類です。
資産といえば現金・預金といったお金や、建物や機械といった固定資産がイメージできます。
資産をもっと抽象的にみると、お金か将来お金を稼ぐための手段といえます。
(貸借対照表の流動と固定とは)

将来お金を稼ぐを別の面から表現すると、将来のお金の節約をする、つまり将来費用として計上するともいえます。
まわりくどいのですが、将来の費用になるということは節税につながり、お金の流出を防ぐ(=納税金額が減る)ので見逃せないわけです。

繰延資産は、将来の費用を貸借対照表で一時保管しているようなものです。
計上には会計上以下のような要件があります。
・すでに支払いが完了するか、支払義務が確定している
・支払に対応した役務の提供を受けている
・支払の効果が将来にわたっておよぶ
(会計と税法でのズレはありますが、まず会計上の要件を理解しておく方が柔軟に対応できます)

今回はフリーランス・個人事業主の方にとって重要な繰延資産である「開業費」をとりあげます。

繰延資産 独立するなら要チェックの開業費

フリーランス・個人事業主の方にとって独立開業は一大決心になります。
現実的には、勤めていたときには無かった支出が重なり、高額となります。
(家や車の購入金額も高額ですが、あらかじめ金額が確定していたり、そもそも返済プランがはっきりしていたりと違いがあります)

独立開業にあたり支払うお金といっても、機械や車両などはそもそも固定資産に計上され、減価償却の対象です。

これに対して、開業費となる繰延資産になるのは以下のような支出です。
・事業で使う物品購入費(開業後なら消耗品費にあたるもの)
・開業のための研修費
・開業準備の交通費
・開業のための接待交際費
・開業までの広告費
・開業までに作成したホームページの作成委託料 etc

なんだか漠然としている印象かもしれません。
押さえておきたいのは、開業以前に支払ったお金にかかわる領収書やレシートを保管しておくことです。
繰延資産(開業費)が将来の費用になるということは、その証拠が必要というわけです。

なお、開業費の費用化のタイミングは任意ですので、経営者の方の判断で決算時に費用計上できます。

また、開業費という勘定科目からわかるように、「開業」を明確にできる措置もとっておきたいところです。
開業したなら、税務署に青色申告承認申請書とともに開業届も提出しておきましょう。
(青色○○ 青色申告とは別に早めに)

繰延資産 貸借対照表を知るきっかけにもなる

フリーランス・個人事業主の方ですと、青色申告であっても貸借対照表を作成しない選択肢はあります。
(青色申告特別控除 10万円か65万円か)
経営者の判断次第で、貸借対照表を作成するかどうかを決められます。

損益計算と税務申告のみをコスパ重視で処理するなら、貸借対照表を作成するのはロスと感じられるかもしれません。

その一方で、独立開業して経営を短期間(1年間)だけでなく、中長期でとらえるなら将来の費用にもなる固定資産や繰延資産の定点観測が可能になる貸借対照表を作成することは経営の見通しが良くなります。

繰延資産(開業費)は独立開業のときに計上され、同時に経営と貸借対照表の関係を知るきっかけにもなります。

 

蛇足
開業費の見積は小さくなりがちです・・・
私の場合も、意外にお金はかかるもんだなーという印象です。

<ご案内>

■林友範税理士事務所

ご依頼はこちら

■災害と税金の情報

災害と税金