ボックス図 税務会計の非標準ツール

よくよく考えれば非標準なのです。

今はこちらのクリアランスが先になるかな。

ボックス図 税務会計の業界用語

業界特有の用語があります。
測量業界で「航測(こうそく)」といえば航空測量ですし、酪農業界で「乾乳(かんにゅう)」といえば出産直前期の牛の搾乳を停止することだったりします。
業界用語はまだるっこしい表現を簡潔にして、意思疎通のスピード感を高めるために使われます。

税務会計業界では複式簿記を土台にして、取引を処理していきます。
複式簿記での仕訳では、左側を借方(かりかた)・右側を貸方(かしかた)と表現したり、一時点のストック情報の表を貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)・一定の期間のフロー情報の表を損益計算書(そんえきけいさんしょ)と呼んでいるわけです。
借方・貸方・貸借対照表・損益計算書は業界用語ではあるものの、簿記の処理を表す点でも標準的な表現と言えます。

その一方で、「ボックス図」という税務会計業界ではよく知られた用語・表現形式もあります。
明確に誰かに定義されたり、制度上整備されたというわけではなく、いつの間にか定着した用語・表現形式です。

ボックス図 決算セールを理解する

事業活動では売上と利益に関心が高まります。
売上とその売上に対応した売上原価がわかればよいわけで、難解な点はありません。
下図のグレーが利益(粗利益(あらりえき))です。

本来シンプルな発想ですが、事業活動が続いていく前提ですと、売上原価を特定の時点で確定させる必要があります。
この売上原価の特定に関連したイベントが、決算セールやクリアランスセール、在庫一掃セール、棚卸です。
売上原価は、年の始め(期首(きしゅ))にあった在庫と当期に仕入れた分から年の終わり(期末(きまつ))にあった在庫を差し引いて計算されます。
売上原価=期首在庫+当期仕入-期末在庫

図の?は棚卸の結果、商品評価損などの損失になる可能性もあることを示したものです。

事業が継続されると、ボックス図はさらに展開していきます。
今年の期末の在庫は、翌年の期首の在庫というわけです。

ボックス図はシンプルな構成ですが、重要な要素が明瞭にわかりますし、複式簿記の処理とも相性が良い印象です。
(複式簿記の売上原価確定の仕訳は、仕入/繰越商品(期首在庫を仕入に追加)、繰越商品/仕入(仕入から期末在庫マイナス)という処理です)

ボックス図 最優先ではない

損益計算の中心の売上と売上原価をシンプルに把握するうえで、ボックス図で直感的に理解することは税務会計の専門外の方にもおすすめです。
(セールや棚卸も一つのボックス図でわかります)

ただし、ボックス図はあくまで便利だから使うツールにすぎません。

実務上は事業活動での売上も原価だけでなく、人件費やその他の費用との関連も考えられます。
また、売上の推移や商品・サービス別の割合の把握ならグラフの利用も有効です。

簿記の試験で出題される総記法では、ボックス図はかえって混乱のもとです。
(総記法の正体 簿記と会計からとらえる)
なぜか会計科目の受験業界ではボックス図を当然のツールとして使っています。
(理解に道は一本じゃない 退職給付会計の場合)

便利だから、必要なときにだけ使う割り切りも必要です。

 

蛇足
ボックス図を創始した方は、どや顔してたんでしょうか?
わたしならどやどやどやぐらいでしょうけど。

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