簡便簡易な会計処理が効率的とは限らない!?
期中現金・期末発生主義の誤解
「簡便」・「簡易」・「効率」は堅苦しい字面ですが魅力があります。
ただし、万人受けするかどうかは保証の限りではありません。
こんなはずじゃなかった!、と言わないためのススメです。
効率的か? 誰のどんな負担か?
税務会計の処理や手続きというと四角四面で融通が効かない
といったとつきにくい印象です。
頭ごなし・上から目線といった印象もあるかもしれません。
一方、現実には会計での「簡便な」処理や消費税の「簡易」課税
といった選択肢もあります。
税務会計の処理の負担であったり、税負担の軽減への措置
といった面で魅力です。
「期中現金・期末発生主義」もその一つと言えます。
効率的か? 現金主義は効率的か?
売上にしても経費の計上にしても会計上は「発生主義」となります。
取引の発生時点で会計上の処理を行います。
たとえば、売上。
11月25日に10万円の備品を販売したのであれば、
- (借方)売掛金 (貸方)売上
という処理で計上します。
12月25日に売掛金の回収、入金があった場合に下記の処理をします。
- (借方)お金 (貸方)売掛金
「現金主義」は上記の2本立て仕訳を、
- 12月25日の入金時
- (借方)お金 (貸方)売上
と一括して処理します。
お金の動きに対応している直感性と処理の少なさが魅力です。
反面、「現金主義」には欠陥があります。
まず、期末時点での未決済取引が帳簿外となります。
たとえば、個人事業主が12月25日に20万円の請求をした後、
未回収で期末日(12月31日)を迎えた場合。
あるいは、売掛金の回収が長期や分割となる場合。
お金の動きに応じた現金主義での会計処理は、
- 取引の実態を示すことができない
- 事業者の管理を煩雑にする
とかえって残念な処理となります。
効率的か? かえって効率性を見失う?
現金主義の欠点を補う措置として「期中現金・期末発生主義」があります。
文字通り期末日での未決済の処理を発生主義でとらえ直す処理です。
会計のルールと現実の処理の負担の妥協の産物です。
一見すると効率的な選択肢です。
とはいえ、現金主義の根本的な欠陥が克服できているわけではありません。
前述の売上取引を現金主義で処理するには、
- 売掛金の回収が短期
- 売掛金の回収が円滑
といった前提が揃っていないとかえって非効率です。
税務会計の処理を申告手続きのためだけの処理ととらえると、
会計処理による効率的な経営の管理の機会を見失います。
選択している会計処理の形式的な一面から踏み込んだ検討がおすすめです。
直感的ではない発生主義での会計処理が効率的な経営につながる
という見方は年次だけでなく月次決算でも活かされます。
蛇足
アイキャッチ画像は2種類のシュトーレンです。
(手前:和菓子店「田中屋(石川県白山市)」、奥:パン屋「うたたね(小松市)」)
材料や作り方の違いが味の違いにも現れていました。
どちらも美味しいので問題ありませんが(笑)。
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