資金繰りのツールが使えなかった理由とは?
利用環境と使い手を底上げする!
仕組みとしては工夫されているツールではあっても、
必ずしも成果につながるとは言えません。
ツールと利用者双方の問題を明らかにしておくと、
次に打つべき手が見えてくるはずです。
使えない 集計表の代わり?
税理士なので事業の経歴の長いお客様とお話しすることがあります。
過去の記憶に残るエピソードをうかがうとともに、
かつて使っていたツールも拝見したりシます。
商工会などから配布された事業の経理に使うツールもあります。
事業経営では決算書・申告書の作成も大切ですが、
事業の存続が欠かせません。
事業の存続では「資金繰り」が最重要の課題です。
手元の資金があれば、短期的に赤字でも事業を継続できますが、
資金が枯渇しては元も子もありません。
経理のツールとして資金繰り表は大切な存在のはずです。
他方で、そうしたツールを損益計算の集計表の代わりとしてのみ
利用しているといったケースがみられました。
使えない 便利なはずの前提
事業でのお金のやりとりが全て現金のみであればシンプルです。
手元の現金の入出金と残高の管理のみで資金繰りは管理できます。
一方、現実の事業は現金のみの決済では済みません。
売掛金や買掛金といった売上や仕入を「発生主義」で計上しつつ、
お金の動きを管理する必要があります。
- 売上時 (借方)売掛金 (貸方)売上
- 回収時 (借方)お金 (貸方)売掛金
下記は拝見した資金繰り表をざっくり編集した表です。
表の構成からは、
- 発生主義で損益の会計処理をしつつ、
- 現金の入出金を管理するためにデータを加工して、
- 手元の現金残高を把握する
といった使用の前提や意図が読み取れます。
経営管理のために試行錯誤して作られたツールと思われます。
使えない ツールも使い手も底上げ!
手書きや書面といっても経営管理のツールは成立します。
使用の前提を理解して、適切に運用することができれば、
資金繰り表としての役割を果たします。
足を引っ張るのは、「前提を理解」と「適切に運用」です(笑)。
発生主義を前提として、複式簿記の理解も期待されても、
利用者側が現金主義で単式簿記では噛み合いません。
手書きや書面だから経営の管理ができないとは言えませんが、
集計や転記、訂正の労力はIT利用より大幅に負担となります。
事業の継続をする上で、資金繰りに無関心ではいられません。
資金繰りのツールが必ずしも高価で複雑とは言えません。
反面、会計処理の前提やツールの運用状況次第では、
ツールの利用で期待できる成果が出せないこともあります。
ツールの利用環境や使い手の理解の底上げがおすすめです。
期待する成果まではそう遠くはないかもしれません。
蛇足
アイキャッチ画像は栗のショコラガレット(信州芽吹堂、長野県)です。
サクッ、ホロッとした食感で美味しくいただきました。
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