課税の繰り延べは使う局面を理解する!
圧縮記帳が残念ではない理由とは?

専門知識が難しく感じられる理由に場合分けがあります。

答えより過程をたどることが理解への近道です。

残念ではない 節税でなく朝三暮四!?

「節約」・「節電」・「節水」と並んで「節税」もみかけることばです。

税理士はお客様の適正な申告・納税のサポートをするので、
「節税」対応もサービスの一環です。

  • 所得税での青色申告
  • 消費税での本則・簡易課税の比較検討
  • 相続税での小規模宅地の特例 etc

税金の仕組みと折り合える税負担の抑制の選択であれば、
積極的におすすめしています。

一方で、一時的な税負担の先送りである「課税の繰り延べ」は
税負担が確定されているわけではないので優先度は下がります。

課税の繰り延べは朝三暮四の印象があります。

とはいえ、課税の繰り延べの全てに消極的ではありません。

たとえば、「圧縮記帳」。

効果は課税の繰り延べですが、採用する理由があります。

残念ではない 処理とイメージ

圧縮記帳」は税務会計のテクニカルな処理で課税を繰り延べます。

  • 固定資産の取得価格をマイナスして、
  • 一時的に課税所得を小さくして、
  • 課税の繰り延べを行う

圧縮記帳の理解には、

  • 損益計算書
  • 減価償却
  • 課税所得

といった前提が知識必要です。

以下では「直接減額方式」での処理をザックリお伝えします。

簿記の処理がわかりにくい場合は当ブログの過去記事を
参照してください。
 (「大人の教養簿記」で検索、2023.12.29-2024.1.3連載)

通常の損益計算書は以下の通りです。

国庫補助金等の収益が加わると、税負担が追加されます。
 (購入した固定資産の減価償却費は無視しています)

国庫補助金の効果が十分に発揮されなくなるので、
国庫補助金と同額の「圧縮損」を計上します。

取得価格の減価償却費の計上からもアプローチしてみます。

取得価格を3年で償却する場合、定額法であれば以下のイメージです。

固定資産の取得時に「圧縮損」を計上することで、

  • 取得時の費用計上UP→利益(課税所得)DOWN→税負担DOWN
  • トータルでの費用計上額は同額

ということがわかります。

残念ではない 圧縮記帳を行う局面

固定資産の減価償却を行う耐用年数で費用をとらえると、

  • 費用計上額合計は圧縮記帳あり=圧縮記帳なし
  • 課税負担に影響なし

と残念な印象になります。

紙面上の仮定であれば、圧縮記帳は帳簿の操作をするだけ
といったテクニカルな処理でしかありません。

圧縮記帳の処理を行う局面に目を向ける必要があります

圧縮記帳が用いられる場面では国庫補助金や保険差益の発生と
固定資産の取得があげられます。

政策的な目的や事故・災害により設備投資を後押しする
という局面です。

長期に渡ってとらえれば合計の課税所得・課税負担は同じでも、
設備投資時の負担を緩和する必要があります。

圧縮記帳は事業の負担としての課税負担を繰り延べることで、
事業の継続と発展につながります。

課税の繰り延べだけでなく、

  • 設備投資
  • 手元資金の管理

といった対象に留意することが重要となります。

 

蛇足
ブログの記事で図解を作成していて悩む対象は「配色」です。
白黒だけではわかりにくく、多色ではごちゃごちゃと…
パステルカラーで少なめの配色にしています。

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