小耳に挟んだ税金の情報をどう扱うか?
令和6年能登半島地震税務支援で再び能登へ
気にかけている課題があると反応が敏感になります。
ちょっとした会話のなかから小耳に挟む情報も増えます。
小耳に挟んだ情報が突破口になることもありますが、
扱い方に留意点がありそうです。

穏やかな川面
再び能登へ 雑損控除相談会
2024年(令和6年)1月1日に令和6年能登半島地震が発生しました。
地震の被害も多大でしたが、地震直後の輪島市での大火災、
同年9月の豪雨水害と被害が続きました。
復旧復興の各種の対応の一つに所得税の「雑損控除」もあります。
災害による損失を所得控除の一つとして組み入れることで
被災者の所得税の負担を軽減する仕組みです。
通常の確定申告で利用する機会が少なくわかりにくいこともあり、
税理士による被災者支援が行われています。
2024年11月・12月も支援活動が能登地方で行われましたが、
2025年(令和7年)4月にも奥能登で支援活動が開催されました。
前回の支援活動に引き続き、今回も税理士として相談会に参加しました。
再び能登へ 小耳に挟んだ情報
震災や豪雨水害以降、行政上の被災者支援措置がとられています。
被災者にとっては重要な措置であり、情報や資料の収集への関心は
依然として強い印象を受けました。
被災者間でのちょっとした会話からの情報交換も
日常的に行われているようです。
わかりにくい・不慣れな行政手続きには不安があるので、
当事者間の情報交換は大切な機会かもしれません。
必要な情報を逃さない点で小耳に挟んだ情報でも馬鹿にできません。
他方、小耳に挟んだ情報が誤解の元になっていることもあります。
たとえば、今回の税務支援の対象の雑損控除。
家屋の被害を所得税の計算に織り込む仕組みですが、
- 古い家屋は控除の対象外
- 家財の損失証明には取得価格が必要
といった誤解がみられました。
実際の雑損控除の仕組みでは、
- 古い家屋でも雑損控除の対象になる
- 家屋の減価償却は33年だが、対象外ではない
- 家財の損失額は家族の構成などから概算で算出
といった対応が可能です。
誤解に基づく判断では雑損控除の活用機会を逃したかもしれません。
雑損控除の利用では、所得税の申告全体のなかでの位置づけが
うまくつながっていないケースがみられました。
雑損控除は医療費控除などと同じく所得控除の一つです。
雑損控除だけでなく、他の控除とともに申告の対象なので、
単独で扱う対象ではありません。
再び能登へ 申告一連でとらえる
税務申告はとっつきやすい手続きとはいえません。
個別具体的な対応では過程や必要な処理も異なれば、
結果も異なります。
雑損控除のように通常扱う機会の少ない税金の仕組みは
誤解されやすいかもしれません。
小耳に挟んだ情報は突破口になる可能性はありますが、
- 断片的ではなく全体の情報
- 一連の流れの中での位置づけ
といった視点での確認がおすすめとなります。
雑損控除に限らず、情報をつなげて理解しておけば、
見通しをすっきりさせることができます。
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蛇足
アイキャッチ画像は相談会場の穴水町役場側で撮影した光景です。
海に近いので風は強かったのですが、穏やかな川面でした。
写真だけをみると大地震の被災地とは思えませんが、
振り返ると土のうやがけ崩れがみられる状況でした。
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■林友範税理士事務所
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