数字を拾うってなんだ?

会計だから複式というのも思い込み。

数字を拾う 不自然を身につけるも一苦労

複式簿記は、人類が生み出した偉大な英知の産物です。

どこかで聞いたようなお話ですし、勉強するとそれもそうかと思います。

取引をシンプルな仕訳形式に変換して、一定のルールで集計すると、経営成績のわかる損益計算書や財政状態を表す貸借対照表ができあがるわけですから、よくできた仕組みです。

さらに損益計算書と貸借対照表、総勘定元帳(仕訳から作れます)があればキャッシュフロー計算書も作れます。

こうした複式簿記に基づく決算書があるからこそ、法人税や所得税といった税金を計算するための所得(税金計算上の利益)の根拠も示せるわけです。

とはいえ、複式簿記という発想は、それなりに直感的にわかる加減乗除とは異質な仕組みです。
決して自然に身についたりしません。

理解・トレーニング・実践と、複式簿記が身につくまでには時間が必要です。

数字を拾う 自然に帰れない

複式簿記を勉強して、いざ会計事務所での勤務を始めても、日々わからないことだらけだったりします。

会計の勉強では刺身のツマのようだった消費税や社会保険料、給料、車検の仕訳が厄介だったりします。

仕訳は取引の資料を確認しつつ、ウェブで検索したり、過去の仕訳を参照することで解決していけます。

会計の仕事をしていると、複式簿記という本来は不自然な処理も理解と慣れと実践で何とかなると思えます。

そうしたなんとなく会計処理になれた頃に、確定申告を迎えるとトタンに足元がぐらついたことがありました。

いわゆる年一(ネンイチ)の個人のお客様の確定申告で、「数字を拾って」と会計事務所で指示されたことがありました。
(税理士業界の収益構造 年一(ネンイチ))

領収書やレシートの整理、控除証明書類の分類、銀行口座の会計ソフトへの入力などは想定していました。
資料の整理分類→入力→集計→決算→申告、という処理を前提にしていたわけです。

そうしたときに、「数字を拾って」という指示は「?????」でした。

指示が、個人使途の場合は除外してならわかるのですが、「数字を拾う」で思考がフリーズしてしまいました。

フリーズの原因は、処理の前提が食い違っていたことでした。
私:会計処理=複式簿記
会計事務所:年一個人で小規模→損益計算書のみ作成 ←貸借対照表を作らないので、複式簿記が不要

資料から損益計算書を構成する収益や費用の金額を単純に集計することを「数字を拾う」と簡潔に表現していたのでした。

不自然なはずの複式簿記になれてしまったために、かえってシンプルな損益計算書を作ることでとまどってしまいました。
(青色申告特別控除 65万円の壁)

数字を拾う 仕事の取り掛かりで確認

上記のようなとまどいは、私の経験の浅さからでたものでした。

会計処理といっても、必ずしも複式簿記が唯一の選択肢ではありません。

私の関わった年一のお客様のケースでも、前年以前の処理や書類を確認していればスムーズに済んでいたかもしれません。

会計や簿記には、こうあるべきというルールはありますが(売上除外や架空経費は厳禁)、目的次第に柔軟な選択ができます。

処理の着地点やゴールの確認は、仕事の終盤だけでなく、取り掛かり段階からも必要です。

 

蛇足
「数字を拾う」に慣れると、複式簿記は厄介だなーという印象が復活しました。

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