大人の教養簿記Vol.6 税金の申告とのつながり
所得税・法人税・消費税もセットで!

「大人の教養簿記」は今回で一応終了です。

会計の技法としての印象が強い簿記ですが、税金とも関連します。

どの税金とどのようにつながるかを知っておくと、
見通しはグッと良くなります。

ごちゃごちゃしてもつながっています

簿記と税金 どの税金が関連するのか?

「租税教室」といったイベントがあります。

税理士が講師役として小・中・高校の授業に参加します。

定番の話題に税金の分類があります。

Q.日本にはいくつの種類の税金があるでしょうか?

A.約50の税目があります

私は税理士ですが、ごく一部の税金しか取り扱っていません。

小学6年生と同じように税金の多さに驚いていたりします(笑)。

税金にはいくつかの分類ができます。

  • 国税と地方税 例:所得税と住民税
  • 直接税と間接税 例:所得税と消費税
  • 申告税と賦課税 例:所得税と固定資産税 etc

税理士が取り扱う税目は「国税」・「申告税」が中心です。

  • 所得税・法人税・消費税・相続税(贈与税)

相続税(贈与税)を除く3つの国税・新国税は簿記とも関連します

簿記と税金 会計と税務のつながりと分かれ目

「税務会計」とまとめてしまうとわかるようでわからなくなります。

仕組み、手順として分けると以下の通りです。

  • 会計→税務の順で処理を行う
  • 会計:簿記による帳簿の作成から決算書の作成まで
  • 税務:会計の成果を受けて申告書を作成

所得税は10種類の所得に分類されます。

簿記と関連する所得は主に「事業」所得です。
 (「不動産」所得も対象ですが割愛します)

税務会計を手順としてとらえると、それぞれ別物の印象です。

税務申告書の作成で簿記の「仕訳」はあからさまには登場しません。

税務と会計は一応別れています。

とはいえ、会計・簿記と税金とはズバッと分離されてはいません

たとえば、消費税。

事業者が納税額を算出する場合、

  • 納税額=(受け取った消費税)-(支払った消費税)

といったとらえ方が原則です。

簿記での処理とは別に上記に関連した集計をすることもできます。

現実には効率性の観点から簿記と並行して処理を進めます。

たとえば、消費税10%の商品を販売した場合、

  • (借方)お金 (貸方)売上・課税10%

仕訳に消費税に関連したデータを付け加えます

会計ソフトの初期設定では消費税の設定もセットになっているので、
期中の仕訳の処理が消費税の申告書作成にまでつながります。

簿記の処理との並行は申告書の作成の効率性だけでなく、
将来の税負担の予測にも有効となります。

所得税・法人税は簿記による決算処理以降に申告書を作成します。

ただし、申告書作成以前から税法が会計に影響していることもあります。

たとえば、減価償却。

固定資産の購入代価を支出時ではなく、「耐用年数」に渡って費用計上します。

「耐用年数」は同じ設備であっても、本来は個々の事業者ごとに異なります。

会計上は個別の事情を踏まえた耐用年数の違いを反映できますが、
税法では固定資産ごとに耐用年数が決められています。

税金の申告書では「法定」耐用年数を基準にすることになります。

処理の流れは会計→税金ですが、

  • (税金→)会計→税金

といった税金の影響を受けつつ会計・簿記の処理を進めることになります。

会計ソフトを購入した、簿記の検定試験にも合格したはずなのに
なぜか会計ソフトを使い始めようとすると手が止まります。

会計ソフトの利用では、

  • 開始残高
  • 固定資産
  • 消費税

といった初期設定が必要です。

貸借科目の開始残高以外は税金と関連する対象です。

簿記を勉強したにもかかわらず会計ソフトが使えない
というもどかしい問題と直面することになります。

簿記だけでなく税金の知識や理解もないと会計処理はできないのか?
と不安になります。

そうした不安は当たらずとも遠からずです。

税金を熟知しておく必要はありません。

一方で、簿記の処理を進めていくための税金の知識がないと、
会計・簿記の処理と税金のつながりが見通せなくなります

段階的・初歩的な理解であっても税金の知識があることで、
会計・簿記の処理が意味をともなって実行できます。

簿記と税金 踏み込んでいくきっかけ

「大人の教養簿記」ということで簿記の仕組みをお伝えしました。

知識の提示や処理の説明は最小限に仕組みの理解を優先しました。

簿記にしろ税金の申告にしろ、お金と関連する処理や手続きは
専門性の壁がいくつもありとっつきにくい印象です。

個別の具体的な課題にはそれぞれに合致した詳細な知識が必要です。

反面、簿記の入口の段階で煩雑な知識に翻弄されてしまうと、
簿記は定型処理のパターン暗記と誤解しかねません。

簿記を利用して機動的かつ柔軟に経営を管理する目的が
形式的な処理で定型的な財務諸表の作成にとどまります。

「大人の教養簿記」は実務の課題にダイレクトに応えることよりも、
簿記の仕組みの理解を通じて簿記の意義をお伝えしました。

簿記の仕組みがわかることで、経営の管理や会計のデータだけでなく、
税金の理解にも迫っていけます。

これまで縁がなかった分野に踏み込んでいくきっかけとなれば幸いです。

 

蛇足
「教養」を大上段に構えてしまうと、つきあいにくくなります。
「教養」は新しい分野へのきっかけの一つととらえていただくと、
前向きに取り組めそうです。

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