政治家のための確定申告の手引!
政治資金に係る「雑所得」の計算の概要を読解!
税金のマニュアルやテキストは義務感無しには読めません。
他人事なら無視したいくらいです。
極めて珍しい例外が爆誕しました(笑)。
政治家の申告 元気が出ない?
「税金 確定申告 手引」ということばが並ぶとゲンナリ、
元気が出ないかもしれません。
税理士だからといっても取扱いに乏しい分野の内容は
気が重い対象だったりします。
ただし、上記は一般論です。
例外があります。
たとえば、世間を騒がせている話題と関連した税金。
2020年頃では「暗号資産(仮想通貨)」が耳目を集めました。
2023年(令和5年)末からは「政治資金(パーティー券、裏金)」が
話題となりました。
どちらも対象となる方はあまり多くありません。
それでも、ちょっと気になる話題です。
なお、暗号資産も政治資金に係る所得税も「雑所得」だったりします。
政治家の申告 政治資金は雑所得で確定申告!
国税庁が示した手引は、
- 『政治資金に係る「雑所得」の計算の概要』
と取り違えようのないタイトルです。
(「政治資金 国税庁 手引」で検索)
税務当局が遡れる期間が5年間ということもあり、5年分の手引が用意されています。
(国税通則法第70条)
以下は令和5年分の手引の内容です。
一般の確定申告の手引とは異なり、A4で3ページとシンプルです。
冒頭より釘を刺してきます。
雑所得は事業所得等に比べると収支内訳書などの決算書の作成が不要なため、
申告処理は難しくない印象です。
しかし、申告期の前々年の収入が1,000万円を超える場合には収支内訳書が必要です。
手引のメインは以下の『Ⅰ政治資金に係る「雑所得」の計算』です。
ここでも本文の前に留意事項が示されています。
計算範囲を狭くとると適正な計算とはならないわけです。
本文では雑所得の計算と損益通算に言及されています。
- 政治資金に係る雑所得=政治資金収入-政治活動のために支出した費用
- 雑所得の赤字はその他の所得との損益通算不可
収入は金銭だけに限定されていません。
下記の留意事項は通常の収入より広い範囲を示しています。
車や事務所の無償提供の賃借料相当額が議員の収入となる一方で、
政治活動のために使用した場合は同額が必要経費となります。
政治活動のために使用していなければ必要経費とはならないわけです。
選挙運動での収入にも留意が必要です。
選挙管理委員会などに報告されていない収入は課税対象となります。
収入が広くとられている一方で、費用には歯止めが示されています。
収入と同様に政治家向けの留意点が費用でも示されています。
物見遊山の支出を安直に費用計上できないわけです。
雑所得のシンプルな式と手引の示す内容から下記が読み取れます。
- 収入⇧-費用⇩=雑所得⇧
今回示された手引は雑所得を対象としています。
とはいえ、雑所得だけで申告することにはなりません。
「総合課税」制度での申告のため、他の所得も漏らさず申告の対象となります。
簡潔な手引ですが、見逃せない留意点が多々ある印象です。
政治家の申告 検察の敵を課税庁で
2023年末から大山鳴動した政治資金問題は政治家は不起訴
といった不完全燃焼の感で終結の見通しです。
ただし、起訴・不起訴といった検察での判断とは別にして、
課税庁は適正な申告の必要性を示しています。
古い表現ですが、検察の敵を課税庁で討つともいえます。
起訴するかどうかとは関係なく納税の義務はあります。
『政治資金に係る「雑所得」の計算の概要』は納税義務逃れへの
皮肉なアンチテーゼと言えます。
蛇足
今回の手引の対象となる政治家は既に実名が報道されています。
今後令和5年分の申告や過年度の修正申告がなされるはずです。
依頼がきたときの値付けをちょっと考えたりしました(笑)。
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