所得税のN分N乗を直感的に理解する!
本当にお得な制度か?
ことばは「独り歩き」します。
保護もされないので、放浪と誤解を撒いていきそうです。
N分N乗 個人だけどひとりじゃない!?
本音と建前という表現を実感する局面があります。
たとえば、所得税。
「申告納税」が建前ですが、
- 源泉徴収
- 年末調整
といった仕組みで「天引き&丸投げ」が実態です。
また、所得税は「個人」の所得を対象にしています。
収入や所得では「個人」に焦点が当てられています。
一方、所得控除では、
- 医療費控除
- 配偶者控除
- 扶養控除
- ひとり親控除
と家族や世帯に関連しています。
見方を変えると、所得税の仕組みは、
- 家族や世帯の在り方
- 社会保障政策
といった事情とも近い税制といえます。
所得税の仕組みで「N分N乗」が話題になる理由でもあります。
N分N乗 山林所得で直感的に理解
「N分N乗」は見慣れない用語です。
「分」は「わり算」、「乗」は「かけ算」を意味します。
所得税の仕組みでの「N分N乗」とは、
- 「所得」を特定の数(N)でわり算をして、
- その結果に税率をかけ算をして、
- 最期に特定の数(N)をかけ算する
といった仕組みで税額を計算します。
ピンとこないかもしれません。
仮に「1分1乗」であれば通常の所得税の計算です。
「N分N乗」はフランスで採用されてる仕組みとして知られています。
日本では、「山林所得」で「5分5乗」方式が使われています。
山林所得での税負担額は以下の式で計算できます。
- (課税山林所得×1/5×税率)×5=山林所得の税負担額
かけ算のルール通りであれば、変な式です。
- 1/5×5=1?
「N分N乗」の式での税率は「累進税率」があることが前提です。
法人税は税率が「比例税率」と一本化されていますが、
所得税は「累進税率」と所得ごとに税率が上がります。
(中小企業云々、「超過」累進税率云々は割愛)
上記の山林所得の税負担額の式を左から計算すると、
- 課税山林所得×1/5
段階で適用税率が決定されます。
山林所得とそれ以外の所得の速算表を比べていみると
5分5乗の計算効果が直感的にわかります。
上記2つの速算表を比べてみると、
- 「税率」の数値や区分数は同じ
という一方で
- 「課税される所得金額」
- 「控除額」
が5:1となっています。
所得税の「N分N乗」の一例といえます。
N分N乗 問題を総覧できる申告書
山林所得で5分5乗による方式が採用された背景には、
所得獲得までに時間を要するためと言われます。
事業の性質と税負担を考慮した事情があるようです。
「N分N乗」を所得税に広く適用する仕組みの導入も
今後考えられます。
所得税は計算対象を「個人」としつつも、
家族や世帯とも関連しています。
言い換えれば、税負担だけでなく、
- 社会保険料負担
- ライフプラン
- 医療費負担
- 年金負担 etc.
と関連する検討対象があります。
「N分N乗」の検討や導入の影響は確定申告書に表れます。
確定申告書の第1表の様式に見慣れておくと、
「N分N乗」の影響がイメージしやすくなります。
蛇足
所得税での「N分N乗」は財政学や社会保障制度で
とりあげられることの多いテーマです。
税法に加えて論点が加わります。
甲論乙駁にぎやかになりそうですね。
シミュレーションが複雑化しそうです(笑)。
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