仮想通貨で脱税の裁判を傍聴しました in金沢地裁

大人の社会科見学。


金沢地裁内、法廷前より撮影

仮想通貨裁判を傍聴 懲役1年・罰金1,800万円

2021年(令和3年)3月30日(火) 午前9:40-9:50
金沢地方裁判所 205法廷

被告人:松田秀次(56)
裁判官:大村陽一

判決
主文
懲役1年・罰金1,800万円、執行猶予3年

判決理由
・被告人は平成29~30年の仮想通貨取引で得た所得を
雑所得から除外して申告せず、7,400万4円を逋脱(ほだつ=脱税)
・申告義務を果たすための課税当局への照会をしていなかった
・納税を果たす姿勢がみられなかった
以上より、懲役1年・罰金1,800万円
その一方で、
・修正申告に応じている
・反省している
・前科が無い
以上より、執行猶予。

3月10日の第1回公判で審理が終結しており、
裁判官からの判決が短時間で淡々と述べられ終了。

仮想通貨裁判を傍聴 仮想通貨脱税は他人事か!?

今回傍聴した裁判は、「仮想通貨(暗号資産)」で得た所得の脱税を
扱った裁判でした。

話題に事欠かない仮想通貨が税金、脱税という面で注目されました。

今回の裁判で目を引いた点は以下の2点です。
・仮想通貨取引の複雑さは当事者でも把握が困難
(被告人の主張)
・仮想通貨取引での所得は、雑所得

私は仮想通貨取引の経験がありません。
取引の把握の困難性には言及できません。

とはいえ、スマホ一つあれば仮想通貨取引は可能です。

取引当事者さえ把握困難な仮想通貨取引がスマホ一つで可能
というギャップの大きさは印象的です。

また、現行の所得税制度では仮想通貨取引での所得が
雑所得という点も強い印象が残ります。

株式などの投資による所得(税)では以下のような仕組みです。
・申告分離
・比例税率(約20%)
・損失の繰越が可能

これに対して、仮想通貨取引での雑所得では、
・総合課税
・累進税率
・損失の繰越の仕組みは無い
といった違いがあります。

今回の裁判では、仮想通貨取引が容易に行える一方で、
巨額の税負担が生じる可能性が明らかになったともいえます。

現行制度は不変ではありません。

今後の仮想通貨取引の動向だけでなく、
税制度の変更にも留意した方が良さそうです。

仮想通貨裁判を傍聴 大人だから傍聴へ

裁判の傍聴というと、
・裁判傍聴マニア
・学生
といった印象が強いかもしれません。

今回の裁判では十数人が傍聴していました。
(大半がマスコミ関係者だったようです)

裁判の傍聴ができるのは、公平で公正な裁判を保障するためです。
傍聴人が法廷内でメモをとれることもそうした保障の一環です。

大人だから、専門家だからこそ裁判を傍聴するという
意味や価値を見出せます。

 

蛇足
金沢地裁は観光地で有名な兼六園の斜向かいにあります。
桜が満開でした。
(冒頭の写真は兼六園側ではなく、金沢城公園側)

蛇足2
今回の傍聴では判決のみで審理はなかったのですが、
検察官は風呂敷持参でした・・・
(極端な状況から考える 紙とスケジュール)

2021年(令和3年)4月9日 追記
被告は判決を不服として、4月8日名古屋高裁金沢支部に控訴した。

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