大人の教養簿記Vol.4 ルールとツールで理解!
公式の原則と非公式のボックス図

「暗黙の前提」はわかっている方とそうでない方を断絶します。

公式のルールと非公式のツールからアプローチしていきます。

石川県の鏡餅は紅白です(林農産 石川県野々市市)

公式と非公式 その根拠は何?

簿記を勉強するのは、

  • 学校のカリキュラム(商業高校、会計学・経営学専攻)
  • 就職対策の一環
  • 部署の異動

といった状況が大半を占めます。

そうした需要に検定試験(日商簿記など)はある程度合致します。

段階的にステップアップできる設定があり、テキストなども充実しています。

実務への対応という需要に応えてくれる面が魅力です。

反面、教養やもっとストレートなアプローチをとりたい場合には、
ちょっと迂遠です。

とりわけ、大人になると理屈や仕組み、根拠を求めます。

天下り式に覚えろ!と連呼されても、あとが続きません。

最初期の丸暗記以外は理解を優先したアプローチに関心が強まります。
 (大人の教養簿記Vol.2 丸暗記からスタート!?)

公式と非公式 売上原価が算出できますか?

通常、簿記の初期段階での学習では会計のルールや基準は
それほど強調されません。

税理士などの「士業」や高度な専門性を要求される職場以外では、
会計法規集などで会計の基準を確認することは少ないはずです。

とはいえ、現実の会計・簿記の運用では公式ルールとして
会計原則や会計基準が裏付けとなっています。
 (会計のルールはフワッとしている?は誤解です!)

企業会計、簿記の処理の中でも重要な売上原価の算定をとりあげてみます。

売上原価も広い意味では費用(経費)です。

一般に経費は支払ったときの領収書やレシートの集計、
足し算で算出する印象があります。

売上原価でも仕入分の金額を合計していく必要がありますが、
足し算だけでは算出不可能です。

最終的な処理、期末の決算整理仕訳での「引き算」が必要です。

具体的な仕訳は以下の通りです。

  1. (借方)仕入シイ (貸方)繰越商品クリ
  2. (借方)繰越商品クリ (貸方)仕入シイ

簿記の初学者は1と2を「シイ・クリ・クリ・シイ」と唱えさせられます。

意味がわからないと呪文です(笑)。

段階的にことばを補っていきます。

1の仕訳は期首の繰越商品(資産)を仕入(費用)に振り替えています。

2の仕訳は期中の仕入(費用)から残っている分を繰越商品(資産)に振り替えています

上記の仕訳を加えた後の「仕入」勘定は結果的に「売上原価」となります。

  • 売上原価=期首繰越商品+当期仕入-期末繰越商品

息が詰まりそうですので(笑)、図解します。

簿記の見える化では勘定科目ごとの変動を「ボックス図」で整理します。

どなたが開発したかは存じません(笑)。

非公式ですが簿記の理解では「暗黙の前提」として扱うツールです。

期首と期末のストック、期中の増減といったフローを整理できます。

売上原価のボックスは繰越商品といった棚卸資産(借方)と関連するので、
上のようなボックスとなります。

買掛金や借入金であれば貸方科目なので、棚卸資産と向きは逆となります。

ボックス図は不可欠のツールではありませんが、データの整理に有効です。

売上原価の算定では上記のボックス図が一般的ですが続きがあります。

売上との対応です。

売上と売上原価との対応を表示するとよくわかります。

費用収益対応の原則」は重要な会計・簿記のルールです。

期間損益計算の要であり、売上と売上原価の対応は重要です。

「シイ・クリ…」を呪文ではなく(笑)、ルールとボックス図でとらえると、
理解が直感的かつ論理的につながりやすくなります。

公式と非公式 法律じゃないけれど

会計や簿記の原則・基準は法律ではありません。

また、実務上の簿記の運用では簡易な処理がとられることもあります。

うっかりすると、なんでもあり!?と誤解しそうです。

誤解です(笑)。

原則や基準と折り合いをつけた複数の選択肢があるにすぎません。

全ての簿記の処理を原則や基準に照らし合わせて理解する必要はありませんが、
簿記の仕組みを支えている裏付けはあります。

また、そうした根拠に基づく「仕訳」の意味の見える化や
「ボックス図」でのデータの整理も理解に役立ちます。

簿記の原則や基準といった公式のルールも非公式ツールの「ボックス図」も
帳簿や決算書には出てきません。

しかし、簿記にはルールやツールが確実に運用されています。

原則や基準といったルール、「ボックス図」といったツールの存在は
簿記の理解を自力で進めるためにも有効です。

 

蛇足
アイキャッチ画像は通りがかりにみかけた鏡餅のオブジェです。
石川県の鏡餅は紅白が定番です。
林農産(石川県野々市市)の店舗・工場前に置かれています。
私(林友範)と同姓ですが、石川県加賀地方では多い姓という偶然です。
中世に林氏という有力な豪族がいた名残かもしれません。

蛇足2
以下は本日のセルフチェックです。

  • 借方科目のボックス図が描けますか?
  • 貸方科目のボックス図が描けますか?
  • 売上原価の算定の仕訳とは?
  • 売上原価の算定の仕訳の意味とは?
  • 決算仕訳後の「仕入」は何を示しているか?
  • 売上と売上原価の関係を示す原則とは何か?

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