設立以来初の引当金取り崩し! オイルショック以上か!?

スルーできるほど軽い内容ではないはずです。


スルーできないおいしさ「竹泉 純米大吟醸」(田治米合名会社・兵庫県朝来市)

引当金取り崩し 実務ではすみっこ?

確定申告、事業所得であれば申告書以前の青色決算書作成に
負担が集中します。

1年間の経営状況をバシッと反映させる最重要書類です。

利益が所得となり、税金の負担額を左右するので
収入や経費の計上金額や内容を確認します。

おろそかにしていい対象は無い!、と言いたいところですが、
現実にはビミョーな対象もあります。

たとえば、貸倒引当金。

青色決算書のすみっこが定位置です。

貸倒引当金の計上は青色申告の特典の一つです。

貸倒引当金を繰入(くりいれ)は支出の無い経費の計上なので
利益(所得)を小さくする節税効果があります。

計上金額は利益操作を防止する観点から限度額があります。

貸倒引当金の計上を「ビミョー」と表現した理由は、

  • 繰入れた金額は翌年繰戻(くりもどし)して収入にプラス
  • 売掛金の規模次第で計上金額が目立たない

といった事情があるからです。

貸倒引当金は節税効果があるといわれますが、

  • 課税の繰り延べにすぎない
  • 金額の効果を過剰に期待できない

といった面もあります。

引当金取り崩し 義務付けられる引当金

簿記の勉強していると「引当金」は重要な論点です。

その一方で、「実務上」というより税法との折り合い上
引当金の出番は個人・中小企業では限定的です。

支出をともなわない見積もりによる経費計上が利益操作、
税額を小さくするため税法からは嫌われるわけです。
(現実の引当金はどこにある?)

こうしてみると、税法>会計(経営)の印象ですが、
会計(経営)が重視されるケースもあります。

たとえば、電力会社の引当金。

電力会社は民間企業といっても公益性があります。

将来の費用や損失に備えた会計処理が重視されるので
引当金の計上も法律上義務付けられています。

その一つが「渇水準備引当金」です。

水力発電は雨量に左右される要素があるため設(もう)けられている
特別法上の引当金です。

なんだか縁のなさそうな仕組みです。

税理士の受験勉強ではテキストのすみっこでみかけた
という印象くらいしかありません。

しかし、2022年(令和4年)3月の現状では
意外に身近な話題とつながります。

原油価格の高騰です。

引当金取り崩し オイルショック以上か?

2022年(令和4年)3月11日北陸電力・中部電力ミライズ・四国電力が
渇水準備引当金の取り崩しを経済産業省に申請しました。
(渇水準備引当金は取り崩しに申請が必要です)

国際的な原油高が続いているので、経営収支の改善のために
引当金の取り崩し(繰入)を行う経営判断です。

渇水準備引当金は水力発電とつながる引当金ですが、
「特別の理由」があれば取り崩しができます。

北陸電力にとって「特別の理由」での取り崩しは1951年の設立以来初だそうです。

オイルショックでさえも取り崩しを申請していなかったようです。

抽象的で実務上あまりみかけない引当金ですが、
原油高や電気料金とはガッツリ関係しています。

引当金といった日商簿記3級でも登場する会計知識ですが、
うっかりスルーしがちなスケールの大きな話題もフォローできます。

 

蛇足
2022年(令和4年)3月ガソリンのレギュラーは1ℓ170円オーバー。
車社会の地方では頭の痛い問題です。

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