相続人の意思を尊重するオモテとウラ
遺産分割協議書の作成

「裏表がない」は振る舞いと内面の在り方が相反していない
という美徳をたたえる視点です。

利害が絡む場合には、オモテもウラもご存知が幸いです。

味が肝心の干柿

相続人を尊重 申告書だけでは完結しない

確定申告期によくあるやりとりですが、

  • 決算書と申告書の区別をご存知ですか?

という税理士からの問いかけに慌てる方がいらっしゃいます。

事業所得や不動産所得の申告では決算書の作成も必要です。

むしろ、作成の時間や労力といった視点でとらえると、
決算書の作成が申告の足かせになっていたりもします。

申告書の作成ではなく、付随する書類の作成が重要なことは
相続税の申告にも当てはまります

たとえば、「遺産分割協議書」の作成。

相続人を尊重 分割協議書のオモテとウラ

相続税の申告の流れは以下の通りです。
 (タックスアンサーNo4202「相続税の申告のために必要な準備」)

  1. 相続人の確認
  2. 遺言書の有無の確認
  3. 遺産と債務の確認
  4. 遺産の評価
  5. 遺産の分割
  6. 申告と納税

税理士が関わるのは、「3」「4」「6」が中心です。

問題となるのは「5遺産の分割」です。

  • 相続人全員
  • 協議
  • 遺産分割協議書を作成

上記は字面の「オモテ」面で読みとると、税理士の登場はありません。

相続人の意思を反映した遺産分割協議書が申告に必要
といった相続税の仕組みを紹介しているだけです。

一方で、視点を「ウラ」に切り替えると、別の問題として

  • 税理士の「非弁活動」の禁止

がみえてきます。

「非弁活動」について確認します。

日本弁護士連合会が以下の「非弁活動」を示しています。

遺産分割協議が相続人間で揉めている場合に税理士が介入することは、
上記の非弁活動に該当することになります。

顧客サービスの充実が不可欠といっても法律の制約があります。

相続税の申告準備であっても、税理士が一歩後退する局面もあります。

相続人を尊重 データと時間が不可欠

相続をめぐっては税負担額だけが問題ではありません。

遺産の分割で相続人間での利害関係の調整が必要になります。

反面、遺産分割だから利害対立必至!、というわけでもありません。

税理士の視点からは、

  • 遺産と債務に関わるデータを整理して
  • 時間的な余裕を提供することで
  • 期限内の申告を進める

といった対応をとることになります。

遺産に関わるデータの整理は相続発生後から開始する
とは限りません。

生前からの相続準備も選択肢の一つです。

長めの蛇足 税理士が遺産分割協議書作成OKという見解

相続税の申告に遺産分割協議書が必要とされる場合、
税理士でも作成可能という見解もあります。

根拠は以下の通りです。

まず、税理士法(税理士法第2条第1項第2号)

「財務省令でさだめるもの」として下記が示されています。
 (税理士法施行規則第1条)

「配偶者控除」や「小規模宅地の特例」の適用に当たっても
遺産分割協議書の添付が必要です。

上記の場合であれば、遺産分割協議書は申告関連書類となります。

税理士だからといって遺産分割協議書作成と無縁ではありません。

とはいえ、上記の根拠も非弁活動に該当しない状況と考えておくべきです。

 

蛇足
アイキャッチ画像は実家のご近所さんからいただいた干柿です。
ごつごつした見た目ですが、なめらかで濃厚な甘みの食感でした。

 

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