事業再生ガイドラインの「私的整理手続」の内容とは?

事業と「整理」が同じ文脈でみかけると引いてしまいますが、
「セーフティーネット」でもあります。


災害復旧も連携で(石川県白山市鳥越地区広瀬町)

私的整理手続 位置づけと対象

「中小企業の事業再生等に係るガイドライン」について以前紹介しました。
(銀行の目線てどんなもの? 「事業再生ガイドライン」の目的とは?)

ガイドラインの第三部は「中小企業の事業再生等のための私的整理手続」を
取り扱っています。

まず、事業再生の整理手続を「法的」と「私的」に分けています。

  • 法的:破産手続、民事再生手続、会社更生手続又は特別清算手続等
  • 私的返済猶予、債務減免

ガイドラインで扱われているのは「私的整理手続」です。

さらに私的整理手続は以下の2つに分類されます。

  • 再生型
  • 廃業型

この記事では、主に再生型私的整理手続に焦点を当てていきます。

私的整理手続 1対1ではない取り組み

再生型整理手続を確認していくと、ガイドラインの特徴が
わかりやすい印象です。

企業側・経営者が顧問税理士などの外部専門家と相談しつつ、
さらに第三者である支援専門家による連携を図ることになります。

企業側・経営者が1対1で金融機関に向かい合うわけではない
という方針です。

同じことは金融機関にも当てはまります。

ガイドラインの再生型私的整理手続では、

  • 企業・経営者
  • 外部専門家(税理士など)
  • 第三者である支援専門家
  • 金融機関
  • 信用保証協会

とが連携する枠組みをとっています。

再生型私的整理手続では実行性を重視しているためか、
「一時停止」の要請も早期から可能としていています。

「上記③」とは、第三者である支援専門家による支援開始後を指しています。

債務返済による事業への圧迫を早い段階で防ぐことになります。

私的整理手続 「事業再生計画」がキモ

再生型私的整理手続では「事業再生計画」の作成・実行・フォローが
キモとなります。

計画に盛り込むべき内容は以下の通りです。

現状に至る過程を分析した上で、信頼性の高い財務データを示し、
実行可能性の高い計画を示すことになります。

債務超過の解消や赤字からの転換の期限もそれぞれ示されています。

計画には報告やモニタリングがともないます。

状況次第では「廃業型手続」への移行も選択肢ということになります。

ガイドラインでは奇をてらった仕組みや提言はみられません。

企業の経営の段階ごとの支援方法を複数で担う長期的な仕組みが示されています。

言い換えると、短期的・一挙に事業再生につなげるという発想ではありません。

ガイドラインでは「外部専門家」や「第三者である支援専門家」による協力を
折り込んでいます。

上記の専門家は何も事業再生の支援に限った専門家ではありません。

「平時」からの連携は「有事」にも役立つはずととらえると、
ガイドラインが事業のセーフティーネットの側面をもつともいえます。

 

蛇足
アイキャッチ画像は2021年(令和3年)5月に発生した土砂崩れの
復旧現場です。
(止めると始まる DX)
惨状ではあるものの、工事が始まると一定の秩序がみられますね。
車を走行中にぼーっとよそ見をしそうになりました(笑)。
(写真は停車して撮影しました)

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