うちは簡単でいいんですよって言われても税理士がスルーしている理由
税理士業界あるある(笑)。
金時草(きんじそう)
うちは簡単で 悪気はないのだろうけれど
税理士事務所に転職して、顧問先を担当するようになると
お客様から共通して言われたセリフがあります。
「うちは簡単でいいんですよ」というセリフです。
「簡単」の意味は少々曖昧ですが、
・複雑な処理などは必要ない
・処理の対象は少なく、金額は小さい
・処理に時間はかからない
といったことをお客様が主観的に表現しています。
個人事業主の方や小規模な経営をされている場合に出会うセリフです。
新人の担当者の不安を気遣ってくれる配慮でもあるのですが、
鵜呑みにできない危険性もあります。
危険性というと大げさな表現と思われるかもしれませんが、
コミュニケーションのギャップはトラブルの元になります。
うちは簡単で 認識のズレと業務水準の維持
経営の状態が個人事業者であったり、経営規模が小さいと、
税務会計の処理の負担は大きくはなりません。
その一方で、依頼を受ける税理士や会計事務所からみると、
・お客様の業態
・業界の取引慣行や動向
・売上や仕入といった商流
といった観点では情報や理解に乏しい可能性があります。
ざっくり言ってしまうと、何が「あたりまえ」かという認識が
お客様と税理士・会計事務所間でズレています。
ちょっと皮肉ですが、税理士は税務会計の処理を「簡単」とは
言いにくいポジションでもあります。
また、税理士が会計や税務の業務を執り行うことには、
一定の業務水準をクリアする暗黙の前提があります。
たとえば、経営規模が小さい個人事業主だからといって
単式簿記での現金主義を選択するわけではありません。
日々の経理処理だけでなく、決算や申告、さらに税務調査といった
中長期での対応も見込んだ処理を行います。
お客様ごとに対応した会計や税務の処理がある一方で、
確保しておくべき業務水準があります。
そうした業務水準を踏まえると、「簡単」ということばは
税理士としては安易に使えません。
うちは簡単で 依頼とコミュニケーション
「うちは簡単でいいんですよ」という何気ないフレーズですが、
お客様と税理士との間でズレが生じる発火点にもなりえます。
発火というトラブルを防ぐためには、依頼や契約をするときにも
認識のズレがないかコミュニケーションをとることが欠かせません。
中長期の顧問契約でも年一(ネンイチ)の契約であっても、
「あたりまえ」のズレは埋めておく必要があります。
蛇足
冒頭の写真は金時草です。
加賀野菜の一つで夏が旬です。
酢の物にすると金時草の紫色が映えます。
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