準確定申告を電子申告で行うか?
手続きの負担と相続税との連続性が課題
断固電子申告すべき!、と言いたいところですが、
現実には場合分けが必要です。
想定外の事態もありうるので、早めに目途をつけたいところです。
準確定申告 必ずしもベストの選択ではない!?
相続が開始されると慣れない処理が続きます。
税金での手続きでは、
- 所得税・消費税の準確定申告
- 相続税
が直近の課題となります。
準確定申告は4か月以内、相続税は10か月以内の申告期限となります。
(相続の開始があったことを知った日の翌日から云々は割愛)
一見すると余裕のありそうな期間の長さですが、
個別の事情次第では状況は一変します。
一つ一つの手続きを滞りなく済ませるという観点で、
準確定申告の電子申告も検討の余地があります。
「検討の余地があります」と歯切れが悪い理由は、
- 必ずしものベストの選択ではない
という通常の確定申告との違いがあるためです。
準確定申告 確定申告書等作成コーナーとe-Taxソフト
通常の確定申告であれば、
- 「確定申告書等作成コーナー(国税庁)」で申告書を作成して
- マイナンバーカードを使って電子申告する
が最優先の選択肢となります。
確定申告に馴染みのない方にとっては負担もありますが、
長い目でみておすすめする選択肢です。
準確定申告では相続人による電子申告の利用は、
選択肢の一つにとどまります。
準確定申告では、
- 「確定申告書等作成コーナー」から申告できず、
- 「e-Taxソフト」を利用する必要があり、
- 申告書以外の書類の提出もありうる
と確定申告と様相が異なります。
「確定申告書等作成コーナー」と「e-Taxソフト」は、
- 電子申告に対応しているものの、
- 似て非なる存在です ← ここ強調!
「確定申告書等作成コーナー」は確定申告に特化してます。
一方、「e-Taxソフト」は税務申告全般を扱える上位互換ともいえます。
ことばを補うと、「e-Taxソフト」は、
- 「電子申告」手続き面での上位互換であり、
- 作成済みの申告書の転記が必要
という重篤な問題を抱えています。
「e-Taxソフト」はとっつきにくい印象です。
「確定申告書等作成コーナー」で決算書・申告書を作成して、
「e-Taxソフト」で電子申告することになります。
収入が年金だけである場合で還付のための準確定申告であれば、
上記での電子申告も大きな負担ではありません。
一方で、被相続人が事業活動をしていた場合では、
- 決算書
- 所得税申告書
- 消費税申告書
と処理の負担が大きくなります。
また、準確定申告では通常の確定申告にはない、
- 付表
- 委任状(還付の場合)
- 確認書(相続人が2人以上の場合)
を所得税・消費税で添付する必要があり、
- 個人事業の廃業の届出書(所得税)
- 給与支払事務所等の廃止届出書
- 個人事業者の死亡届出書(消費税)
といった書類の提出もありえます。
どれも「e-Taxソフト」での提出が可能です。
とはいえ、「e-Taxソフト」の使い勝手を考慮すると、
利用は最善手とは言えません。
相続人が準確定申告を行う場合では、
- 「確定申告書等作成コーナー」で決算書・申告書を作成した上で、
- 「e-Taxソフト」での電子申告
という選択もあれば、
- 準確定申告書に必要な文言を追加した上で
- 紙の書類で申告
という選択にも合理性があります。
あるいは、相続開始後に税理士に依頼する選択も有効です。
準確定申告 相続税との連続性
準確定申告は被相続人の所得税・消費税が対象です。
相続税とは一線を画しているようにもみえますが、
- 「相続財産」として連続性がある
という側面もあります。
被相続人が事業活動をしていた場合、
- 事業用財産(売掛金・在庫・固定資産等)
- 債務(借入金・未払金等)
を相続財産として把握する必要があります。
準確定申告と相続税との連続性に着目すると、
税理士への依頼に合理性があります。
相続が開始され、準確定申告の手続きに迫られた段階で、
- 電子申告だけでなく、
- 税理士への依頼
も検討していただければ、申告の負担を少なくできます。
準確定申告の申告期限4か月には検討と手続きが続きます。
お早めの対応がおすすめです。
蛇足
「確定申告書等作成コーナー」と「e-Taxソフト」が同じ組織から
同一線上の目的で提供されていることが不思議です。
「良貨」が「悪貨」を改善してくれることを期待しています。
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