棚卸をしないと利益が確定できない理由とは?
三分法が現実的な理由と問題点
会話の流れでは理解できているように思えても、
決算書をみると「?」が連発になることがあります。
会計処理での「棚卸(たなおろし)」が典型的な例かもしれません。
なんとか無視できないか?という試行錯誤ではなく(笑)、
利益の確定や経営と関連させることがおすすめです。
棚卸と利益 わかりやすいはず…?
商売にとって大切な式は、
- 売上-経費=利益
といった極めて簡潔でわかりやすい表現があります。
模擬店であれば、上記の式だけで充分です。
一方で、継続している事業・経営では同じ内容を
グッと複雑に表現しています。
経費のなかでも売上と関連の強い「売上原価」は、
- 仕入=売上原価ではなく、
- 期首棚卸高+当期仕入-期末棚卸高=売上原価
とまどろっこしい処理があります。
期首と期末の「棚卸高」がわかりにくさの原因にも思えます。
棚卸と利益 簿記の処理がわかりにくい?
会計処理はシンプルでわかりやすいことを優先すべき
という考え方は妥当なはずです。
「売上原価対立法」であれば、処理はシンプルになりそうです。
- 仕入時 (借方)商品 (貸方)お金
- 売上時 (借方)売上原価 (貸方)商品
仕入時点でプラスとなった棚卸在庫が売上時点でマイナスとなります。
売上も同時に計上するので、一見すると最良の処理方法では?
と飛びつきたくなります。
他方、ではあなたが上記の処理の担当者だったら可能ですか?
と問われると見解が180度変わるはずです。
複数、数種類どころか数百・数千種類の商品の販売の度に
売上だけでなく該当する売上原価を計上する必要があります。
DXによる解決や働き方改革でフォローできるとはいえません。
「退職代行」に依頼しかねない事態となります(笑)。
貴重な人材を失わない会計処理が必要となります。
棚卸と利益 経営の管理とつながる
簿記の仕組みはアタマでっかちのようで現実的な面があります。
「三分法」はその典型例です。
商品の売買を「仕入」・「繰越商品」・「売上」で表現します。
期中の仕入の処理はわかりやすいはずです。
- (借方)仕入 (貸方)お金
三分法がわかりにくく感じられるのは、
- 売上時に仕入勘定の処理がともなわず、
- 決算処理のみの仕訳で売上原価を算出する
といった点にあります。
決算で2つの仕訳により売上原価を算出する処理が
直感的に売上原価を把握できないことにつながります。
- (借方)仕入 (貸方)繰越商品 ← 期首棚卸高を仕入にプラス
- (借方)繰越商品 (貸方)仕入 ← 期末棚卸高を仕入からマイナス
三分法では売上原価勘定はストレートに表現されません。
期中の仕入処理に決算処理を加えることで、
- 期首棚卸高+当期仕入-期末棚卸高=売上原価
といった売上原価を算出します。
決算処理で棚卸高の処理を忘れないことも欠かせませんが、
- 計上する棚卸高は適切なのか?
という問題があります。
計上する棚卸高次第で利益、所得、法人税・所得税が変動します。
棚卸商品の杜撰な管理は売上だけでなく、横領などの問題にも関連します。
三分法による売上原価の処理は仕訳や金額だけでなく、
棚卸高の確認や管理とも関連しています。
月次でも年次でも棚卸は会計処理の問題だけでなく、
経営の管理ともつながってます。
蛇足
2024年(令和6年)は10月も好天が続いています。
気温は高めですが、それでもチョコレートがとけず幸いです。
カカオ豆の世界的な高騰が気がかりですが…
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