消費税インボイス導入は一過性の問題だったか?
課税事業者を続けるための対応とは?

「インボイス」の表示や「登録番号」の確認騒動も
遠い過去の話に感じられそうです。

完全な誤解です(笑)。

消費税インボイス制度の課題はしっかり根付いています。

根付いている笹寿司(石川県白山市)

根付く課題 あれから1年

2011年(平成23年)8月に「地上デジタル放送」が開始される直前、
「地デジ難民」発生が懸念されていました。

アナログ放送の終了により既存のテレビでの受信ができなくなり、
テレビ視聴ができなくなる問題があったからです。

地デジへの移行直後は、テレビを多数抱える宿泊施設で視聴できない
といった事態はあったようです。

他方で、デジタル放送対応のチューナーを利用したり、
テレビの買い換えもあり、問題は沈静化しました。

2023年(令和5年)10月には消費税「インボイス制度」が開始されました。

消費税の納税額は、

  • 納税額=(売上などでえ受け取った消費税)-(経費などで支払った消費税)

といった計算の仕組みです。

インボイス制度では、

  • 消費税課税事業者の「登録番号」で
  • 「支払った消費税」であることを根拠として示す

といった仕組みです。

課税事業者にとっては、

  • 取引先の「事業者」が 課税事業者であるかどうか?

という点で納税額が左右されるわけです。

問題は「免税」事業者側の負担と対応にありました。

「インボイス難民」が懸念されました。

根付く課題 問題はなくなったのか?

売上高1千万円未満の事業者は消費税の納税が不要です。

税負担だけを考えれば、あえて免税事業者が課税事業者になる
といった選択は例外となります。
 (多額の投資による還付などのために選択することはあります)

他方で、取引の継続から課税事業者になる合理性があります。

課税事業者になることでの税負担と取引の継続がせめぎ合う
問題がありました。

課税当局が対応策として用意した選択肢が「2割特例」です。

免税事業者が課税事業者になった際の消費税の納税額を
事業内容に関係なく収入の約2%とする仕組みです。

税負担を抑えられるので、免税事業者には魅力的な選択肢です。

「インボイス難民」対策には効果があったようです。

根付く課題 課税事業者を続ける対応とは?

2023年の消費税インボイス制度の騒動は空騒ぎだった
とは言えません。

2024年の確定申告期には、

  • 免税事業者から課税事業者になったにも関わらず、
  • 消費税の申告・納税を失念している!

といった問題がみられました。

  • インボイス対応→課税事業者登録→消費税申告・納税

といった基本的な仕組みがスルーされていたようです(笑)。

きっちり申告・納税していても、今後もノープロブレムとは言えません。

2023年(令和5年)の2割特例の対象期間は10月~12月でした。

個人事業主であれば、2024年の対象期間は1月~12月となります。

2割特例を選択した場合でも、納税負担は2023年より大きくなります。

また、前々年の売上高が1千万円を超えていると2割特例は選択できず、
本則課税か簡易課税の選択となります。

税負担を左右する選択なので検討が必要です。

さらに簡易課税を選択する場合には「消費税簡易課税制度選択届出書」を
あらかじめ税務署に提出する必要があります。

2割特例とは異なり申告時に簡易課税を選択することはできません

消費税インボイス対応は一過性での対応では済みません

事業の動向や制度との兼ね合いに留意し続ける必要があります。

決算・申告期以前からの対応がおすすめです。

 

蛇足
アイキャッチ画像は実家の母が作った笹寿司です。
秋祭りに合わせて作られる押し寿司です。
実家の寿司ネタはサバとサーモンが定番となっています。
私が子どもの頃はサーモンではなくシイラが定番でした。
加賀地方では柿の葉で包んだ寿司もみられます。

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