節税したお金はどこへ行ったか?
将来に向かって合理的な選択か?
「節税」は無視すべきではない、必ずやるべきもの
という思い込みがあるかもしれません。
税金の負担を合理的に減らすことは賛成ですが、
「合理的」の理解が大切です。
節税したお金の行く先も想定した節税がおすすめとなります。
節税の行先 どうにもならない申告期
確定申告期になると「節税」の二文字を目にする機会が増えます。
消費税では、簡易課税や2割特例の利用と税負担軽減策は限定的です。
他方、所得税は各種の税負担軽減策が多く、選択の余地がある
といった仕組みの違いがあります。
とはいえ、年明けの申告期にできることといえば、
- 事業所得であれば経費の漏れを防ぐ
- 所得控除の漏れを防ぐ
- 期限内に提出する
といった無難で定石の対策が目立ちます。
所得税は暦年(1/1-12/31)を課税の期間としているので、
年が明けると節税の選択肢は限られます。
年内だったら節税の選択肢は利用できたかもしれません。
とはいえ、節税対策が必ずプラスとは言い切れません。
節税の行先 お金はどこに行ったのか?
事業所得での所得税負担は、
- 売上-経費=利益≒所得
- (所得-所得控除)✕税率=所得税
と単純化できます。
売上の除外や架空経費の計上といったタブー以外では、
- 経費の計上
- 所得控除の計上
- 税率
による税負担の違いが出てきます。
適用される税率は所得次第で大きくなる仕組みとなっています。
経費や所得控除が増えれば、結果的に所得税負担が減ることになります。
青色申告での青色申告特別控除はお金の支出がない経費
という点で魅力です。
一方、経費や所得控除の増加には手元のお金の支出がつながる
といった状況があります。
税負担を下げる効果、手元資金の支出のバランスだけでなく、
将来への影響も検討の対象となります。
たとえば、設備投資。
売上への貢献や業務の効率化につながる投資もありますが、
効果が小さく手元資金が不自由になる面もあります。
小規模企業共済などの所得控除でも同じことが言えます。
節税の行先 仕事と生活の計画
直近の所得税負担は下がったが、手元資金が不自由になると、
仕事でも生活でも選択肢が狭まります。
節税は合理的な範囲ではおすすめですが、合理的かどうかの判断には
納税者の仕事や生活の申告年度以降の計画が必要です。
申告年度分の損益状況だけを見ていては判断できません。
翌年以降につながる貸借対照表も判断の材料となります。
個人事業主であれば、家族の生活状況が変わることで
お金の行く先にも変化が生じます。
事業主・経営者の将来の生活と直近の将来に必要なお金と
個人生活分でもお金の管理の検討が広がります。
節税は合理的にはおすすめですが、合理的な判断かどうか
準備や検討があらかじめ必要となります。
申告期には新規の節税策ではなく、定石を漏らさないことが優先です。
蛇足
損益計算や税額の計算に敏感な方が手元のお金の増減に無関心
といったことがよくあります。
節税とお金の増減の関係を探ると、貸借対照表に無関心だったりします。
手元のお金の増減はわかりやすい切り口なので意外な印象です。
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