付加価値経営はゴールじゃない

目標ではありますが、ゴールじゃないわけです。

付加価値経営 コロナとテイクアウト

コロナウイルス騒動で飛躍的に選択肢が増えたものが、飲食店によるテイクアウトです。
これまで夜の営業が中心だったお店が、昼のお弁当などを売り出し始めたりと対応の早さに驚きもしました。
緊急事態宣言解除がなされたとはいえ、「3密(密集・密閉・密接)」回避の傾向が続く可能性もあり、テイクアウトという選択肢も有効なわけです。
(今後は梅雨の食中毒対策は課題でしょう、テイクアウトの逆襲 期待と課題)

4月より金沢市でも「Uber Eats(ウーバーイーツ)」が展開されています。
(金沢でも自転車で運搬している姿を見かけました)

テイクアウトで素早く対応を開始した飲食店がある一方で、そうした展開が困難な飲食店も明らかになってきているようです。
テイクアウトと一線をおいているお店の特徴の一つに、付加価値の高さがある印象です。

付加価値経営 変化に対応できるか

一般に付加価値経営は、量的な経営拡大とは異なる高収益をめざした経営とされています。
同じ業界や同種の製品・サービスを提供していながら、他の競合者よりも利益(額・率)を高く獲得するという経営です。
ブランドやある種のステイタスを示す製品・サービスを提供しているともいえます。

飲食店業界でも、ファーストフードから要予約の高級店まで選択肢は多くあります。
要予約の高級店となると、付加価値が高い経営といえるわけです。

近年のインバウンド効果もあり、平時では高級店は国内外からのお客様で賑わっていました。
しかし、コロナウイルス騒動以降は営業自粛や緊急事態宣言もあり休業を余儀なくされている状況です。
さらに厄介なことに、お店でのサービスを提供することが付加価値の重要な要素でもあり、テイクアウトに対応しがたいことです。

先日、石川県某所で複数の飲食店が合同で、お弁当のテイクアウト販売を実施しました。
(地方は車社会ですので「ドライブスルー」形式だったようです)
平時なら要予約のお店も出店していたのですが、テイクアウトの商品はご飯もの一品でした。
参加店の価格帯が800~1,000円だったため、お弁当一式では普段のメニューと合わず、といって企画に合わせた価格のお弁当を提供しては平時のサービスとズレが大きかったため、ご飯もの一品という提供だったと思われます。

付加価値経営 経路の狭さが限界

売上は、数量×単価です。
飲食店業界では、ファーストフードなどは数量に重点化した経営です。
その一方で、高級店は単価を重視した付加価値を追う経営です。

通常、数量を拡大経営していくと過当競争に陥り、薄利多売となるため経営が脆弱になりがちといわれます。
価格帯が安い飲食店(たとえばラーメン店)でも、客単価を上げることが重要になるわけです。

しかし、コロナウイルス騒動とテイクアウトの対応では付加価値経営の通じにくい限界も明らかになりました。
その限界とは、数量を追うことができない、別の見方をするとサービス提供や販売経路(チャネル)の選択幅が狭いということです。
平時の付加価値の高さが、別のチャネルでの営業とズレたり矛盾したりするわけです。

付加価値を高めることは、業界や業態にかかわりなく目標にしたい経営です。
ただし、付加価値を高めているから有事でも適応できるかは別問題です。

 

蛇足
石川県でも、著名な飲食店の閉店や温泉旅館の長期休業が出始めました。

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