賃上げ促進税制のターゲットとは?
減税以外の視点からも理解する!

「減税」はキャッチーで使い勝手よく利用できることばです(笑)。

賃上げ促進税制はメリットのある制度ですが、減税だけが的ではありません。

政策の目的や意図から仕組みを理解することもおすすめです。

上乗せ要件のえるぼし(左)とくるみん(右)

減税以外 コストアップでも歓迎?

「増税」の二文字は小さく・こっそり書かれていても注目されます。

見逃せない対象です(笑)。

一方で、パッと見はわかりにくいものの、注目される税制度もあります。

賃上げ促進税制」はその一例です。

賃金をアップした場合に法人税が減税対象となる制度です。

税額をマイナスできる点で魅力があります。

2022年度では賃上げ税制の効果で5,150億円の減税効果があったようです。

魅力的な税制度ですが、わかりにくい一面もあります。

税制度ではありますが、国税庁ではなく経済産業省や中小企業庁、
厚生労働省の公表資料の確認が必要な面があります。

以下では中小企業と賃上げ促進税制の要件を確認していきます。

減税以外 基本要件と上乗せ要件

中小企業の場合、要件を網羅すると税額の緩和が期待できます。

  • 全雇用者の給与等支給額の増加額の最大45%税額控除

適用期間は、

  • 令和6年2024年4月1日から令和9年2027年3月31日までの間に開始する各事業年度

中小企業を限定として、下記も減税として機能します。

  • 賃上げをした年に控除しきれなかった金額の5年間の繰越しが可能

賃上げをした後で赤字となり法人税が発生しなかった場合でも、
繰越しにより減税の効果が享受できます。

適用の必須要件では「給与等」の確認が必要となります。

「給与等」では役員やその親族は対象外となっています。

お手盛りでの賃上げでは制度の要件は満たせません。

下記はシンプルですが要件を満たした例です。

賃上げ促進税制では税額控除アップとなる上乗せ要件もあります。

まず、教育訓練費増加要件です。

対前年比+5%と一見シンブルですが留意点もあります。

  • 外部講師や外部研修、施設への支払いが対象
  • 教育訓練費≧給与等✕0.05%

企業内部での訓練費の支払いは対象になりません。

ここでもお手盛り対策がされています。

上乗せ要件では子育てとの両立と女性活躍支援が加わりました。

要件は下記のいずれかとなっています。

  • くるみん以上 or えるぼし二段目以上

税金とも経済政策ともちょっと毛並みの違う制度が加わっています。

「くるみん」と「えるぼし」は厚労省が企業を認定する制度です。
 (「くるみん えるぼし 厚労省」で検索)

  • 「くるみん」:子育て支援企業を厚労省が認定
  • 「えるぼし」:女性活躍推進企業を厚労省が認定

「くるみん」も「えるぼし」も認定基準があります。

中小企業向けの要件では大企業などよりも要件が緩和されています。

減税以外 経営と税制度の利用

賃上げ促進税制は法人税額の大幅な減税が期待できる仕組みです。

税負担額の緩和による効果が期待できます。

他方、賃上げ促進税制は雇用面での政策と関連した税制です。

  • 給与
  • 教育訓練費
  • 子育て支援
  • 女性の活躍支援

中小企業では賃上げ促進税制の5年間の繰越し控除の効果だけでなく、
人材確保のための対策も同時に検討することになります。

賃上げ促進税制は税制度ですが、税金以外からの検討も課題となります。

 

蛇足
賃上げ促進税制は加点主義の減税制度です。
税金対策としての制度利用は本末転倒になりがちですが、
魅力が伝わりやすい印象があります。

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