経営セーフティ共済は手段か、目的か?
損金不算入の2年縛りにご注意!
ある時期の合理的な経営判断が常に合理的な判断である
とは言い切れないことがあります。
経営者には身近な「経営セーフティ共済」の制度変更でも
目的と手段の再検討が必要になりそうです。
手段か、目的か? 〇〇さんに勧められて…!?
毎月、お客様を訪問すると想定外の問題と遭遇します(笑)。
決算・申告期が近くなると「節税」がパワーワード化します。
「〇〇さんに勧められたんですが…」で始まる会話では、
節税の提案やアイデアが切り出されます。
「経営セーフティ共済」の利用も定番の選択肢です。
別名を「倒産防止共済」、省略して「倒産防」で知られています。
「共済」という名称の通り、本来は経営上の保険としての機能、
目的を狙っています。
掛金が経費(損金)となるので副次的に「節税」、実態は課税の繰り延べ
といった効果もあります。
共済の目的や手段はともかくとして、事業経営者にとっては魅力があります。
一方で、政府からは物言いがつきました。
手段か、目的か? 不適切な利用!?
中小企業庁から経営セーフティ共済の利用に関して物言いがつきました。
報告では下記の内容が指摘されています。
- 現在の加入・利用状況
- 節税への傾倒
- 制度変更
共済全体の傾向は債権回収の焦げ付きに対する共済貸付が減少する一方、
加入が進展しています。
とりわけ掛金積立限度額が増額されて以降の伸びが顕著です。
任意の解約では加入3・4年目の割合の高さが目立ちます。
セーフティ共済は40か月以上納めていると掛金全額が戻ります。
事業の資金繰りの一環としての共済の解約もありますが、
解約直後の再加入が際立っています。
セーフティ共済の加入と解約の反復により課税の繰り延べを続けており、
- 脱退と再加入により積立額が変動することで貸付可能額も変動するため、
- 連鎖倒産への備えが不安定となり、
- 本来の制度利用に基づく行動ではない
と指摘しています。
経営の安定化の手段であるはずの経営セーフティ共済の利用が、
「節税」目的に傾倒している点に物言いを付けているわけです。
報告ではウェブ記事やYouTube、書籍・雑誌での共済の節税指南にも
言及されています。
「節税(課税の繰り延べ)」効果を否定してはいないものの、
放置する気がない姿勢がわかります。
手段か、目的か? 2年縛りと再検討
経営セーフティ共済が経営の安定化のための制度である趣旨は維持しつつも、
解約と再加入の反復による「節税(課税の繰り延べ)」対策がとられます。
解約直後の共済再加入が可能である一方で「節税(課税の繰り延べ)」を無効化する
という制度変更となります。
経営セーフティ共済の解約以降の2年間の損金不算入の縛りとなるわけです。
セーフティ共済の機能としての変更はありません。
経営の安定化の「手段」として依然経営セーフティ共済は魅力があります。
掛金の経費(損金)計上による「節税(課税の繰り延べ)」も可能です。
ただし、上記の効果を「目的」として折り込んだ経営の常態化は不可能
という制約が加わったわけです。
経営セーフティ共済の加入や解約といった経営判断と
「手段」や「目的」との整合性を確認する必要があります。
拙速な判断が長期に影響する可能性もあります。
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蛇足
報告では節税としての共済の利用を指南していたコンテンツを
具体的に提示していました。
政府当局が敏感にメディアをチェックしていることがわかりますね。
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